2. 情報授業開設にともなう環境整備
2-1 コンピュータ・ネットワークの自然な利用環境の構築
1995年度に端末5台で始まった校内ネットワークは、その有用性が校内で認められはじめ、昨年度までに校内隈無くネットワークが張り巡らされ(本校教育工学委員の手作り)、1998年度には各研究室、特別教室、図書室やコンピュータ室などに60台ほどの端末を設置していた(現在約90台)。この際、コンピュータネットワークが校内で市民権を得たポイントが2つある。
1つは、生徒用の端末を充実させるとともに、コンピュータ室を特殊な場所として閉じたものとせず、できる限り自由に使えるように開放したことである。少なくとも昼休み、放課後はほぼ自由に利用できるものとした。また、生徒全員に電子メールアドレスを与え、希望する生徒にはホームディレクトリも与えた。
2つめは、できるだけ教官が使いやすく手の届く場所に端末を置いたことである。情報教育の必要性を観念的に理解していただけでは、無理をしてまで新たな授業を設置しようとの機運は高まらない。教官がコンピュータネットワークを中心とした情報活用にどっぷりと浸かって、その有用性や危険性を自ら感じていなければ仕事を増やしてまで「情報」授業を設置することはあり得ない。
もしも文部省が、2003年からの教科「情報」を本気で成功させたいなら、いますぐにでも、全ての学校に多数のコンピュータとこれらを結ぶネットワークを設置し、ともかく教員に自由に使わせることが、一番の近道であろう。教科「情報」の教員免許所持者も生み出されず、現職教員の一部にしか教科「情報」を推進しようと言う機運を生み出すこともできないのでは、21世紀の情報教育を推進できようはずがない。
2-2 授業環境
「情報」の授業環境は、2台のサーバー(ともにsolarisで動き、1台を主に授業用に利用している)と生徒用端末約50台(全てマッキントッシュ、半分はiMac)である。生徒用端末はコンピュータ室と視聴覚室に分かれており、生徒が1人1台の端末を利用する場合には、2部屋に分かれることになる。現在、全生徒(1000名を越える)に電子メールアドレスを与え、1学年337人の全生徒一人一人にはホームディレクトリも与えている。電子メール(Eudoraを利用)や情報授業での作品、各自のWebページなどは、こののホームディレクトリ(一人あたり10Mを配分)に保存させている。unix上の各自のホームディレクトリへのアクセスは、マックのセレクタ機能をunix側のnetatalkにより可能にしている。セレクタによるファイル共有と全く同じ方法で各自のホームディレクトリが利用できる。このシステムにより、構内のあらゆる端末から、容易かつ自由に電子メールを利用し、任意のファイルを保存、更新、削除できる。当然、自分のWebページの制作、修正なども自在である。
同様に教官用とTA用およびゲスト用としてJ組(本校のクラスはH組まで)のホームディレクトリがある。また、セレクタ上で教材配布用にGUESTという、パスワード無しに利用できるフォルダーも他のホームディレクトリと同列で存在する。
教材の配布には、前記のGUESTフォルダーや教官用端末の一台に設定したファイルシェアー用のフォルダー(読み出し専用)を主に利用している。また、作品の提出には、各自のホームディレクトリからWebページとして提示したり、教官用端末の一台に設定した、ファイルシェアー用のフォルダー(書き込み専用)を主に利用している。授業の指示は、多くの場合クラス毎に設定したメーリングリストを通して、一斉に配信している。テキストベースの課題提出には、各情報担当教官用メールアドレス宛に電子メールを利用させている。このように、情報授業に関する教材の配布、課題の提出は、ほとんど電子ファイルによっている。
情報授業で使うアプリケーションソフトは、ほとんどすべてがプリインストールされたもの、フリーウェア、および自作教材である。ソフトウェアを端末分購入する予算はなく、やむを得なかったのであるが、それでもおおむね必要な授業はできたと思われる。
また、ネットワークの保守管理や構築なども可能な限り教育工学委員があたった。しかし、あまりにも時間的な負担が大きく、また専門的な知識も必要であるので、全国の学校でこれを前提にすることは現実的ではない。この点について、実際に「情報」が実施される時点では、教育現場で必要な保守管理やアドバイスをする専門家が必要である。もちろんこのためには、十分な予算措置が必要である。
2-3 ネットワーク系列分離による情報の保護
本校の校内LANには、ethernet系列が二つある。当初、この使い分けは、端末の校内の位置的な違いによっていた。しかし、情報授業を始め、生徒のネットワーク利用が盛んになるに従い、AppleTalkにより容易にファイル共有できてしまうシステムが気になりだした。パスワードが設定されているというものの、生徒から教官用端末の存在が見えているのである。この問題を回避するために、生徒用端末と教官用端末をethernet系列毎に区別して乗せるように、一学期に切り換え工事を行った(もちろん、教育工学委員の手による)。夏休みには、ルーターのアクセスリストやプログラムのバージョン変更により、生徒用ethernet系列からは教官用ethernet系列は見えず、その逆は出入り自由な環境を構築した。これにより、生徒用ethernet系列からは、校内LANには一つの系列しかないように見えている。