校長BLOG

第53回校長BLOG

令和7年度 入学式 校長式辞

第72期 313名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

在校生および教職員を代表して、皆さんを心より歓迎いたします。

保護者の皆さまにおかれましても、お子さまの御入学、誠におめでとうございます。これまでの御支援と御尽力に、深く敬意を表します。

本校は、1954年に設置され、以来70年にわたり、教育実習生の受け入れを通じて教育の未来を支えるとともに、高等学校教育の改善と改革の拠点として、多くの研究開発に取り組んでまいりました。こうした伝統のもと、新入生の皆さんには、先生方と共に、大いなる好奇心を持って学び、多様な活動にチャレンジして欲しいと思います。

今、社会は急速なデジタル化と情報化の波の中にあります。Z世代に続α世代を生きる皆さんにとって、スマートフォンやパソコンは、日常生活と切り離せない存在となっていることでしょう。自分の欲しい情報が瞬時に手に入り、自分の興味や関心に最適化された環境の中で、効率や即時性が優先され、「自分に合わないもの」や「関わりたくないもの」とは、自然と距離をとる、そんな状況が生まれています。

しかし、成長や発見のきっかけは、必ずしも、自分にとって快適なものの中にあるとは限りません。むしろ、自分とは異なる価値観や未知との出会い、思いがけない出来事―そうした“偶然”こそが、新たな視野を開くきっかけになります。

学校とは、皆さんに最適化された学びだけを提供する場ではありません。時には興味がわかない教科、得意ではない活動、気が進まない場面もあるでしょう。しかし、それこそが学校の醍醐味なのです。予期せぬ出会いや体験を通して、皆さん自身の世界を広げ、未知の可能性と出会ってください。

この考え方を支持する理論があります。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」です。この理論では、人生のキャリアの約8割が、偶然の出来事によって形成されると考えます。そして、その偶然は、日々の好奇心や柔軟な姿勢、前向きな行動によって引き寄せることができるとも言われています。

高校生活は、皆さんの人生の土台を形づくるかけがえのない時間です。どうか、柔らかい心で多くのことに触れ、自ら動き、対話し、考え抜いてください。そうすれば、きっとこの学校で、かけがえのない仲間や経験に出会えるはずです。

ただし、忘れてはならないのは、高校の学びはこれまでの基礎の上に築かれるということです。各教科の内容に不安があるときは、まずは自分自身で振り返り、学び直す姿勢を持ってください。そして、悩んだり不安になったりしたら、一人で抱え込まず、担任や教科の先生に相談してください。本校は、生徒一人一人に寄り添い、支えていく体制を整えています。

保護者の皆さま、本校の教育活動は、お子さま一人一人の個性と可能性を大切にし、その成長を支えることを理念としています。今後とも、本校の教育方針に御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

結びに、本日入学された皆さんの、実り多き高校生活と健やかな成長を心より願い、式辞といたします。

令和7年4月7日

東京学芸大学附属高等学校長 羽田邦弘