第38回校長BLOG
2022.9.30 中庭集会
皆さん、今日は。
今年度は、入学式、遠足、体育祭、林間学校、辛夷祭と規模の制約はあっても実施してきました。やっと少しずつ日常が近づいてきた感がありました。しかし、ここにきて本校としては最悪の状況、感染者が急増して全校休業をせざるを得なくなりました。
私の判断に誤りがあったのではないか、油断があったのではないかと反省いたします。今回のような、学校での感染者の増加を完全に防ぐことは、実は簡単です。長期的な全校休業、ロックアウトしてしまえばよいのです。
もちろん、現実にはそうはいかない。なんとか学校活動を続けたい、対面での授業を行いたい、感染者が増加しない範囲で行事や部活動を行いたいと考えました。言わば、少し間違えばどちらかの谷に墜落する両側が切り立った細い尾根道をこわごわ進むような危機感がありました。
このような状況、このような背反する要請に応えなければならないことは、実は社会ではよくあることです。その際、一方的に判断したいという誘惑、all or nothingで自分の決定は正義であり反対者は悪だとしたいという欲求、と闘うことが大切です。反対者もそれぞれの事情があることを理解しなければいけない。大衆迎合のポピュリズムに陥ることなく、
The greatest happiness of the greatest number、最大多数の最大幸福を目指して調整し良き妥協をすることが必要です。生徒の皆さんも、将来の社会貢献のため、そして現在の行事遂行や部活動のために、この危機の時代のネゴシエーション(交渉)の技術と経験を積んでおきましょう。
今回の本の紹介。夏川草介、小学館、「臨床の砦」。新型コロナウイルス感染症と戦う人々が、どのような状況下で相矛盾する要請に応えようと苦戦したかをリアルに描いた小説です。私たち学校関係者より、ずっと厳しい細い尾根道を歩いてきた、そして今だに歩み続けている医師の記録です。こなれた文章で読みやすいので、テーマは深刻ですがすらすらと読め、めでたしめでたしの結論ではないのですが、読後感は爽やかなものがあります。一読を。