第49回校長BLOG
令和6年11月29日
中庭集会にて
皆さん、今日は。
今学期も残りわずかとなりました、皆さん体調は如何ですか。ちょっと前までは1年生で感染症によると思われる欠席が増加し、心配したものでした。あと10日あまりで2学期末考査なので健康にはくれぐれも気をつけてください。
特に、受験を控えている3年生の皆さんは、これからが正念場です。最後まで諦めずに頑張ってください。1年生、2年生の皆さんも、先輩たちの姿を見習い、自分の目標に向かって努力を続けてください。
さて、世界情勢は大きく変化してきています。アメリカ大統領選挙やヨーロッパでの選挙結果を通じて端的に現れた現象により、グローバル化、ダイバーシティ重視、国際的な協調での地球環境問題対応などの今までの国際的な潮流に逆風が吹いています。日本でも同様です。
このような状況下においても、私たちは、複雑な問題を多面的に考え、論理的で柔軟な発想で最大多数の最大幸福を追求していきたいものです。冬来たりなば春遠からじ、勤勉な楽天家として日々を充実して過ごしていきましょう。
現代の状況を読み解くために、スペインの思想家、ホセ・オルテガ・イ・ガゼットの主著「大衆の反逆」を勧めます。「敵と共に生きる」というイデアを説く、まさに現代必読の書だと思います。私は繰り返しこの本を推薦してきました。
是非、一読を。
第48回校長BLOG
坂の上の雲 明治という時代と現代
最近、坂の上の雲と言う2009年から2011年にかけてNHK総合で放映されたドラマが再放送されている。作家司馬遼太郎の同名の小説をドラマ化したものである。明治維新前後に生まれた、日本陸軍騎兵の創始者秋山好古、日本海軍の連合艦隊参謀真之兄弟と俳人正岡子規の青春と日清戦争、日露戦争を描き、明治維新後の日本という国の坂の上の雲を目指して歩むがごとき姿、即ち明治の精神を描こうとしている。
司馬の作品らしく、明快で爽快。朝鮮半島や中国大陸が欧米列強に植民地化されようとしているのを見て、若き日本は自国を守るために軍備を増強し、戦争をする。ほぼ地政学的・軍事的側面からのみ時代と戦争を説明し、経済的側面が弱い。が、そのことこそが、小説としてテレビドラマとして、物語性を際立たせ面白いものにしている。この虚構の明治に浸り味わってみよう。
ドラマ中の印象的な言葉、秋山好古、「身辺は単純明快でいい」。秋山真之、「あしは一流の学者にはなれん、器用すぎる」。国家も戦略も単純明快が気持ちよい。精神的に非常に健康である。学者として一流の仕事をするためには、思い付きで勝負するようではだめである。石の上にも『30年』くらいの気持ち、愚直なまでの粘り強さが大事である。これらの明治の特性で、清国とそしてロシア帝国を破ることができたというのである。そしてこの明治の精神が衰えた時、二二六事件が起こり、満州事変とつながり、太平洋戦争の敗北をもたらしたというのである。
繰り返すが、国家間の問題、国際問題について、経済的側面を軽視して単純化することは分かり易く爽快である。しかし、現実的に戦略を立てる際には大いに注意しなければならない。アメリカ合衆国をはじめ多くの国では、多くの変数に注目し多様な価値観を俯瞰しつつ判断するといった態度に疲れ、大衆迎合的な分かり易い議論と解決策が歓迎されている。これは精神と知性の退廃であり危険な兆候である。
一方、現代の利害と思惑が複雑に絡まりあい錯綜している(しすぎている)社会において、時にこの『明治の精神』は、個人が前に進むためには役立つのではないだろうか。自分探しの航海で難破している人、表明された以上に相手の思惑を探る人、自分がどう見られているか必死になって探りついには岩陰に隠れてしまう人。嘘でよいから単純明快に振舞ってみよう。与えられたこと自分で選んだことに不器用に集中し、1年や2年成果が出なくても愚直に継続してみよう。これは、逆説的には、きわめて贅沢な時間の使い方であり、有難いことなのかもしれない。
国家間の問題と、個人の問題とではダブルスタンダードがあっても良いのかもしれない。
第47回校長BLOG
知の冒険に旅立とう(中学生の皆さんへ)
生成AIをはじめとしたIT技術の進歩と「時代遅れ」の戦争というなんともアンバランスな組み合わせの世界情勢の中、日本でも新たな働き方、新しい教育の時代が到来しています。本校生徒には、一人の人間として、AIを活用し、混乱した地政学の時代と社会を力強く生きてほしいものです。そして自分のためだけではなく、国際社会に貢献するために、自らが身につけた主体的に考え積極的に世界を変えていく力(エージェンシー)を活用し様々な分野でイノベーションを引き起こす人になってほしいと考えています。
そのために、今年から再度指定された文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業を大いに役立てたいと思います。理数はもちろんいわゆる文系、経済学でも法学でも文学でも、理数の考え方とツールとしての数学は必要です。広い教養と深い専門性を持って進学し社会に出て活躍できるような教育を目指しています。
本校は、生涯学習し続ける意欲と方法を身につけた人間、多様な情報から意義のある課題を見出す人間、相手の多様な価値観と文化を理解し共に働いていく人間を育てます。柔軟で強かな粘りを持った人間はきっと困難な状況下でも活躍してくれると信じています。
中学生の皆さん、皆さんも本校での知の冒険に参加しませんか。