校長BLOG

校長BLOG特別編<始業式>

令和3年度始業式

大野 弘

 

昨年の今日も、新型コロナウイルス感染症が世界的にまだまだ油断できない状況にあるという話をしました。完全な終息は、ワクチンが作られ普及するときまで待たねばならないので、1年近くかかるかもしれません、と言いました。そしてその翌日から全国的な学校休業となりました。

残念ながら、現実は私の予想より厳しいものになってしまいました。今現在、ウィルスの猛威も弱まらなければ、ワクチンの普及も遅れています。もう一度、今年いっぱいで収束してほしいものと願うばかりです。その時まで、予防対策をしっかりして、自分とご家族と周囲の大切な人を守りましょう。

こういう時にこそ、楽しいこと、美しいこと、良いことを探す力が必要。危機の時に、ウィットを忘れないことが大人です。そして、力が入りすぎて頑なになるより、適度に脱力していたほうが厳しい局面に対応できるものです。

さて、本校は、あと数年で70周年を迎えます。古希になるわけです。今の社会では、70歳は稀な年寄りなどではなく、現役の方も多い。高等学校の世界においても、創立70周年はかなり若い方です。例えば、日比谷高校は140年以上ですし、戸山高校は130年以上とされています。学校は適切な改革さえ怠らなければ、老害などとは無縁のようです。敢えて、古き皮袋に新しい酒を盛ればよいのです。柔軟に時を読み、時代の一歩先を歩めばよいのです。

もっと脱力する話をすると、実は今日、私は生誕65周年を迎えました。皆さんは、自分が20歳になる時をさえ想像がつかないのではないでしょうか。ましてや、皆さんのお祖父さんお祖母さんの年代である65歳という状態は全く想定外の状況でしょう。しかし、皆さんも65歳になるのです。65歳から自分の高校生時代を振り返ると、背伸びしつつ力み過ぎ、臆病な自尊心と尊大な羞恥心で、他人に厳しく自分に甘く付き合いづらい人間だったと思います。思い返すと、ギャッと言って逃げ出したいくらい恥ずかしい状況でしたが、それでも少数の友人と理解してくれる先生がいたことが救いでした。

よく自分をしっかり見つめろとか、自分探しの旅とか言います。でも、あまり内面のみを見るのもよくない。高校時代、外の世界に目を向け、いろいろな体験をして、のびのびと生きていくのも悪くないと思います。

学習や行事・部活に集中し、時にはリラックスして外を眺める。バランスが大事です。美しく、しなやかに、そしてしたたかに、附高生活を楽しんでください。

今月の1冊、集英社新書、加賀乙彦『不幸な国の幸福論』。精神科医・心理学者にして文学者である著者が、「追い求めている間は決して手に入れることのできない幸福の真の意味を問う」本。不幸になる種を自分の中に探すのではなく、自分以外に目を向ける必要性を日本社会の精神構造から説いています。自分のことを顧みて、頷ける点が多々ありました。一読を。