2000年度 附属学校部研究紀要

あらゆる教科でのコンピュータネットワークの活用のために

 

東京学芸大学教育学部附属高等学校

教育工学委員会

川角 博,佐久間俊輔,鈴木仁也,安井 崇,吉野 聡,大谷 晋,坂井英夫,滝澤政彦,田中義洋,田中正雄,遠藤信也,荒井一浩,菅野 晃,林 正太,酒井やよい,遠藤真紀子

(委員外での協力;松本至巨,宮城政昭)

 

はじめに

 ITという言葉の定着とともに、何が変わっていくのだろう。学校現場でもインターネットの導入とともに授業風景が変わりつつある。新教育課程より、普通教科「情報」が高等学校では必修となるが、そのような教育内容の変化だけではない。また、生徒によって展開されるコンピュータを使った主体的な活動だけでもない。本稿で重要視するのは各教科の今までの授業において、より生徒の学習活動を効果的に展開できるようなデジタルコンテンツの内容と、それが有効に使われるであろう環境についての提案である。コンピュータの学校への整備は10年ほど前から積極的に進められてきた。実際、本校にも24台の生徒用コンピュータがコンピュータ教室に整備された。しかし、年に2〜3回しか利用されない教室でコンピュータは活用されず、扱いに詳しい教員のみが出入りをする部屋となってしまった。どこの学校でもみられるような光景であるが、この数年間で本校もどうにかそのような状況から脱し、教科「情報」を試行するに至った。第一章ではこれまでの本校の実践を簡単にまとめることにより、これから本校に必要なデジタルコンテンツと環境がどのようなものかを明確にする。第二章では、政府が公立学校への情報関連機器及び環境の整備を提示した、ミレニアムプロジェクト「教育の情報化」報告をもとに学校環境の変化とデジタルコンテンツの必要性を明確にする。第三章では,本校における各教科でのコンピュータネットワーク活用の現状や今後デジタルコンテンツが自由にやりとりされる環境がどのようなものか、岡山県と世田谷区の具体例の紹介を扱う。第四章では、情報化に対応した各教科教育で活用されるデジタルコンテンツを公教育現場から提案する。

 本稿の中では「情報化」と「情報教育」という言葉が数多く使われるが、このようにご理解いただきたい。「情報化」とは、情報産業の発展や情報の氾濫とそれに伴う生活そのもの、考え方等の変化をさし、学校現場においては環境の変化がもっとも大きいと考える。「情報教育」とは社会の「情報化」を受け、学校において情報リテラシーを育成していくことをさし、必ずしも教科「情報」を特定するものではない。

1 東京学芸大学附属高等学校における情報教育の実践

 

1.1 情報教育実践の経緯

 前章では、行政主体で進められる情報化についてとらえたが、ここでは本校の実践報告を例として、学校主体で進めている学校現場の「情報化」をとらえてみる。

・ 本校へのインターネット導入期(1995〜96)

 本校は平成7・8年度とNTTのマルチメディア教育活用プロジェクトの一校として、アメリカのグローバルスクールハウスプロジェクトとも連携。当時ネットワークへの接続が簡単な上、操作も楽なMacintoshを5台とサーバーを設置。Cu-Seemeというテレビ会議システムの利用が実験の中心にあったことから、1.5Mbps専用回線の接続による恵まれた環境でインターネットというものに入っていくことができた。ネットワークの管理と教育利用研究は、教育工学委員会という分掌で担当する事となった。5台の端末は、地学、美術、物理、地歴、英語の各研究室に設置。一カ所に設置して、誰かが集中して管理をするのではなく、まずはできるだけ多くの教員がインターネットに触れることを重視した。生徒には研究室内で利用をさせ、授業での利用の可能性と、生徒に利用させる上での問題点を模索した。その後、徐々に端末を増やし、ネットワークを延長し、生徒が自由に使える環境を用意しながら、全ての研究室への端末の設置を目指した。ネットワークは手作りである。HPの開設に始まり、遠隔授業、E-mailによる外国との交流等、教員主体のインターネット利用に生徒をどんどん巻き込んでいく形で数多くの実験的な授業を行った。

・ マルチメディアの教科利用模索期(1997〜98)

  平成9年度以降の回線は、一時学術情報センター経由を選択したものの、データの転送速度の問題から、OCNに変更。また、授業での必要性から、全生徒に電子メールのアカウントを発行。全職員にも発行した。そのような環境整備と並行して、各教科でのネットワークを利用した実験的な授業を行った。また、年1回以上の公開授業研究会と保護者に対する見学会を行いながら、更なるネットワークの延長と教科以外の利用も模索した。その中からでてきたのは、生徒に対して基本的なコンピュータリテラシーを定着させた上で各教科の授業で活用させたいという教員側からの声であった。実際、生徒用のコンピュータの修理に費やす時間は尋常でなく、その面からも必要性は明らかであった。

 平成10年度から11年度にかけて、「情報化に対応した教育課程の編成とその実践」という研究主題で高等学校教育課程研究指定校となり、「情報」の授業の開始に合わせ、視聴覚室にサーバーと生徒用端末を増設した。

・ 教科「情報」開設(1999〜)

 1年生に1単位で、必修で教科「情報」を設置することとなった。内容は、現在提示されている学習指導要領によるものというわけでなく、本校の授業に必要と思われるコンピュータリテラシーを中心に教育工学委員会で考案したものである。現在、教育工学委員3人一組でTTを組んでおり、そこにTAが数名加わった形で授業を行っている。情報の専任教員はいないので、あらゆる教科の教員が混在した形である。ここまでの詳細な流れは、教育工学委員会の執筆した研究紀要に記してあるので、そちらをご覧いただきたい。

・ 教科利用展開期(2001〜)

 コンピュータやコンピュータネットワークを活用した授業は、すでにフル回転状態で行われている。ここで改めて問い直すのは、コンピュータやネットワークに振り回される授業ではなく、それぞれの教科の目標を達成するために必要なデジタルコンテンツの整備という教科の情報化である。むりせず、通常の授業で必要なときに取り出せ、効果的に扱える環境とコンテンツはどのようなものなのか。第3章と第4章にまとめる。

 現在の環境は以下のようなものである。

 

 1.2 現在の本校内ネットワークの概要

 ・ サーバー3台。

   生徒用端末(Macintosh約80台)は、2教室(25台と50台)及び図書館に分散設置。1年生のみ各HR教室に1台ずつ設置。

 ・ 教員用端末(Macintosh約30台)は、各研究室及び事務室、教務室に設置。

 ・ 校内 L A N は、基幹1G支線100Mで教員用生徒用の二系統に分けて敷設。

 ・ 1.5MbpsOCN専用回線にてインターネットと接続。

  設備面をみると大変恵まれた環境であると考えられるが、この約5年間に少しずつ必要に応じそろえていった結果である。サーバーの一つには一年生全員分のホームディレクトリを設けた。これにより、生徒はフロッピーディスクを持ち歩く必要はなく、校内のどの端末からでも必要に応じてクリッカブルに、自分のホームディレクトリにログインすることができる。将来的には生徒用端末は、ハードディスクを持たないネットワークコンピュータの形になることが管理上も良いと思われるが、その形への移行的なシステムであると考える。 

 

2 ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」に見る21世紀の学校環境と子どもたち

 

 2.1 ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」とは

  インターネットの教育利用については、文部省と通産省それぞれで別々に研究が行われてきた経緯がある。ミレニアム・プロジェクトとは、政府が推進している新しいミレニアムの始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新であり、その中の一つとして「教育の情報化」事業が位置づけられている。内閣総理大臣直轄の省庁連携タスクフォース(バーチャル・エージェンシー)は平成11年12月に総理に報告を行った。その報告により内容を明確にする。

 2.1.1 「教育の情報化」報告より

  教育の情報化の必要性について、以下のように記している。

   「近年の著しい情報通信技術の発達に伴い、社会のあらゆる分野で情報化が急速に進んでいる。このような中で、21世紀を担う子どもたちを育てる教育も、また子どもたち自身も情報化の流れを避けて通ることはできなくなっている。今後の教育においては、情報化の「影」の部分にも十分に配慮しつつ、情報化によるメリットを最大限に活かせるような環境づくりをしていく必要がある。」

  概要は以下の通りである。目次の一部を提示する。

    「第1章 教育の情報化によって目指すべき目標

      I. 子どもたちが変わる

      II. 授業が変わる

      III. 学校が変わる

    第2章 具体的な取り組み

    第1 ハード面の取り組み

     I. 全国の学校のすべての教室にコンピュータを整備し、すべての教室からインターネットにアクセスできるような環境づくりを推進する

     II. すべての学校においてインターネット接続の高速化を図る

    第2 ソフト面の取り組み

     III. すべての教員がコンピュータを活用して指導できる体制をつくる

     IV. 地域や民間企業の協力を得て、学校に多数の人材を活用し学校の情報化をサポートする

     V. 関係省庁・民間が連携して、質の高い教育用コンテンツの開発やそれらの提供を推進する事業を実施する

     VI. 産・官・学連携によるバーチャルな研究体制をつくる

     VII. 「教育情報ナショナルセンター」を整備する

    第3章 教育の情報化の推進に当たって配慮すべき事項」

 2.1.2 「教育の情報化」の具体的内容について

 文部省(当時)の岡本薫氏はミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」を、主として以下のような事業であるとまとめている。

1公私立学校のコンピュータ整備等(各教室「パソコン2台+プロジェクタ」)

2公立学校のインターネット接続(校内LANの整備による「教室接続」を含む)

3教員研修の実施(90万人の教員の研修を2年間で実施)

4教育課程準拠コンテンツの開発(教科書に準拠した「教員用のディスプレイ」用コンテンツ等)

5教育情報ナショナルセンター機能の整備

 2001年度までにすべての公立学校がインターネットに接続できるようになり、すべての公立学校教員(約90万人)がコンピュータの活用能力を身につけられるようになる。2004年度には、私立の小中高等学校が公立学校と同程度の環境に整備され、公立小中高等学校には校内ネットワーク機能が整備される。さらに2005年度には、学習資源を活用した学校教育用デジタルコンテンツが開発整備され、すべての公立小中高等学校等が各学級の授業においてコンピュータを活用できる環境が整う。すなわち2005年には特別教室ではなく、各教室で様々なホームページが閲覧できたり、授業用の映像資料をサーバから手元に持ってきてプロジェクターで投影できるということである。これは、学校教育の内容についての変革ではなく、学校環境の変革とその環境を使いこなせる教員を育成しようという事業である。

 

2.2 「教育の情報化」をうけて

 我々は、この現実を受け止め積極的に授業に取り込んでいき、よりよい授業を作るべき努力をしなければならないと考える。それには、行政側から与えられる環境を事前に理解し、現場における問題点の捻出が必要である。しかし、「教育の情報化」ではおおまかな提示はされているが、詳細については不明確である。コンピュータについては低価格化が進んだ上、多くのソフトが付属しているので基本的な環境はそろえやすいが、液晶プロジェクターはまだまだ高価である。暗いところであれば使用できるものは安価になってきたが、通常の教室の明るさで使用できる1800ANSルーメンのものは100万円程度はする。インターネットの専用回線の高速化についても気になる。教員が教室の端末にデジタルコンテンツをダウンロードし、多くの生徒が同時にWebで検索をするという活動が、どのくらいの速度の回線であればストレスなく使えるのであろうか。このような2005年の環境を具現化している様子を参考にし、それが満足できて使 いやすいものなのか、行政側から与えられるだけでなく学校側から要望を出していきたい。そ れもコンピュータに詳しい先生だけに任せるのではなく、各教科の教師も積極的に参加すべきである。なぜなら、教育現場に必要な環境が整備されるかどうかは重要な問題であり、特にネットワークに関しては簡単に更新ができない設備だからである。そのためには前述のような環境でどのような実践ができそうか、なにが必要かを予測する必要がある。次章では 各教科でのコンピュータネットワークの活用状況,これを支援する体制,これからのデジタルコンテンツ活用に必要な環境面について述べる。

 

3 あらゆる教科でのコンピュータネットワーク活用のために

3.1. 各教科でのコンピュータネットワークの活用例

 本校では,全校生徒・職員があらゆる教科,特別活動などでコンピュータネットワークを活用している。もちろん全員が電子メールを利用し,ホームディレクトリを活用している。この活用を支えているのは,教育工学委員会のボランティア的活動である。6年前から始まったコンピュータネットワーク活用研究が各科目でのコンピュータ活用実践を生み,これが「情報」教育の必要性を育て,必修「情報」授業が始まった。この情報授業が,生徒のコンピュータリテラシーを育てるとともに,教官にとってはコンピュータネットワークの教科教育等での新たな活用の可能性を生み出すという,良い循環を生み出している。

 全生徒にメールアドレスを与え始めた4年前から,各教科でのコンピュータネットワークの活用が盛んになってきたが,ネットワークの使い方については,これを利用する教官が必要に応じて各自の科目時間を割いて教えていた.生徒が盛んにネットワークを利用するようになると,単に使い方だけを教えるのでは済まなくなってきた.コンピュータネットワークの基本構造や,利用上のモラル,情報の扱い方,著作権など全校生徒に学んでおいて欲しいことが山ほど現れてきたのである.

 そこで,「情報」を1年生に必修授業として1単位追加することになった.この授業は,教育工学委員を中心に,全ての教科の教官が参加して,31組のティームティーチングによって実施されている.さらに,大学生や大学院生によるボランティアがティーチングアシスタントとして授業やシステムのサポートに当たっている.

このような「情報」の授業すら必要となってきた,現在における各教科でのコンピュータネットワーク活用例を、以下に示す.

 具体的な実践例については,本校教育工学委員会による過去の研究紀要を参照されたい。

3.1.1 現代文

(1)         現代文授業におけるWebページと電子メールの利用

 これは,現代文の解釈についてクラスを越えて,様々な考え方をWebページ上で緩やかに戦わせ,多様な考えにゆっくりと触れつつ,自分の考えを深めていこうとするものである.

          あらかじめ提示された問題点について,各自の解釈を電子メールで授業担当者に送る。

          授業担当者が整理して,代表的なものをWebページ上に掲載する。

          生徒は自分のクラスはもとより,他のクラスの議論も踏まえ,解釈を深める.

(2)         オンラインディベート

 Webに置いた電子掲示板を利用してのディベートの試みである。利点としては,ディベートの経過が記録に残り,人前での話の苦手な生徒でも意見が言い易い,掲示板により議論が分類されていく,などであろう。もちろん遠隔地とのディベートも可能である(東京都と愛知県とでも実施した)

3.1.2 古典

(1)        「和歌集の表記」「テーマ別漢詩の感慨」についての調査レポート

 国文学研究資料館 電子資料館等を利用して,各自のテーマに沿った調査をし,その解釈をレポートとして報告する。Webでの文字列検索により,これまで一首一首の解釈にとどまっていたものが,歌集の編者による編纂意図を探ることが可能となった。また,学外も含めた古典文学の研究者たちにも協力を求め,生徒はメールなどでの質問も可能としている。

(2)        古典文学の解釈の意見交換

 電子掲示板により,カテゴリごとに意見交換をし,その解釈を深める。

3.1.3 地理での利用

(1)        調べ学習での利用

 班毎に決めたテーマに沿って,Webなどを利用して調査し,Web上にその報告をする。この際,地理ページから各班長のページにリンクを張っておき,各班長は自分のページに班員へのリンクを張る。

(2)        統計情報から地理情報を読む

 アメリカや日本の統計局から農業や気候などのデータをダウンロードし,そのデータを加工・分析することで,自然地理,人文地理的な現状についての理解を深める。

(3)  地理実習のデータ提供と発表

11学期に毎年実施している地理実習の成果を上げるために,あらかじめある程度の情報を提供しておく。

3.1.4 現代社会

 現在の日本が直面している(しつつある)問題に対して,インターネットなどを利用してリアルタイムで進行している事柄に迫る。「基地と安保,地域の特徴と未来」では沖縄県の高校生とCU-SeeMeで交流もした。地球規模の問題やリアルタイムの問題について,同じ時代・社会を生きる一員として考えさせる。

3.1.5 数学

 グラフ計算機などにより,関数の幾何学的なイメージを確かめさせ,解の位置を推測させる。また,表計算とグラフを用いて,問題をグラフ化しそのの解の意味を考えさせる。

3.1.6 物理

 物理学の成果の実社会での利用についての調査,Web上への物理レポート発信,メールでのレポート提出,表計算を利用した実験データの整理・分析,表計算による物理現象のシミュレーションによる実験結果の考察等に利用している。また,東京工業大学の研究室と接続し,物理の遠隔授業を実施した。

3.1.7 化学

 生徒が行う化学実験にリンクしたよくある生徒の質問,疑問とその答えをWebで実験情報として発信する。質問は,おもにメールで受け,これをもとにWeb上に実験ごとに回答をのせていく。タッチセンサ付きのマルチメディアボードを利用して,立体的な分子構造モデルを様々な角度からの観察は,分子構造の理解に役立っている。

3.1.8 地学

(1)         遠隔授業;普段の授業では聞けない専門家による授業を,普段の教室でうける。例:国立天文台の先生に特別による天文の遠隔授業,東京学芸大学(本学であるが,大学と高校は遠く離れている)から,恐竜の足跡に関する特別講義

(2)         地学実習レポートのWeb上での共有

(3)         カナリー諸島にある遠隔操作望遠鏡をWebで利用し,昼間にリアルタイムで行う天体観測

3.1.9 芸術

インターネットを利用した美術鑑賞・比較の授業,コンピュータ上での作画の技法,MIDIを利用した簡単な作曲,編曲などをおこなう。

3.1.10 保健・体育

 インターネットを利用した保健の調べ学習,調査結果の報告会では,コンピュータプレゼンテーションを中心とした発表が行われる。柔道のような技をコンピュータ画面に取り込み,これを分析的にみる。

3.1.11 家庭科

(1)         Web上での弁当展;生徒の力作弁当をWeb上に公開する。

(2)         賢い消費者となるために;詐欺まがいの商法,食品の安全性,家庭からの環境汚染などについて調べる。

3.1.12 英語

 教科書で話題に取り上げられている内容(例えば The Lessons of Easter Island では イースター島やこれに関連すること)について,調査・報告をする。もちろん検索サイトは英文である。また,国外のメール友達と電子メールでの情報交換をし,CU-SeeMeを利用して生の英会話を体験する生活の中の英語にふれることができる。

 

 以上は,200132日のeスクウェアプロジェクト成果発表会資料として提示したものであるが,このときに示したプレゼンテーションの一部を,補足として以下に示す。

 

以下15ページに各ページ2枚程度の図が入る。

 

3.2 教科でのコンピュータネットワーク活用支援のために

 上記のように,これまでの本校各教科でのコンピュータネットワークの活用では,生徒による主体的な調査,分析,発表の要素がかなり大きい。これを支援するために,「情報」の3学期授業では,以下のような実践を行わせている。平成13年度3学期の生徒向け指示例を示す。

***** 3学期授業についての生徒への指示 *****

授業テーマ「情報の授業を作ってみよう」

 

1 ねらい

・ 情報に関する諸問題や情報を支える科学・技術,関連する社会システムや人間との関連などについて,自ら問題を設定し,実践的に学習する。

・ この学習過程で,これまでの学習成果を最大限に活用して,情報の検索,収集,分析,発信などを実践する。

・ 情報をいかに相手に確実に伝えるかを実践し,その結果を分析する。

・ 自らの活動により,新たな情報を生み出す工夫をする。

 

2 概略

・9班編成とする(1班 45名;男女混合にしよう)。

・各班毎のオリジナリティーあふれる情報の授業が実施できる様に,研究・準備する。

・伝えるべき内容について,10分間の授業を実施する。

・この内容の理解度を測る試験をあらかじめ作っておき,授業後4分間で実施する。

(授業と試験の時間が合計14分に収まればよい)

・主な授業内容は,班のリーダーのページに公開し,各班員からリンクできるようにしておく。

・試験の採点をし,結果についての分析とともに報告する。

・調査中も毎時間作業の進行状況をteach-aにメールで知らせ,班員にもCc.する。

・最終的な授業の後,授業教材を提出(Webページについては,そのURLをメールで示す),授業作りに当たってどのようなチームワークがとられたのかその役割や活動などについても報告する(teach-aにメール)。

 

3 調査及び準備日

2001116 ()

2001123 ()

2001130 ()

200126 ()

 

4 授業及び試験日

1時間あたり3班の授業とする。

2001220 ()報告書締め切り3/5

2001227 ()報告書締め切り3/5

200136 ()報告書締め切り3/14

 後の方が準備時間はとれるが,結果の分析,報告がつらくなる。

 どの班がいつ発表にするかは,今後決める。

 なお、2/6から2/20にずいぶん時間が取れそうではあるが,入試期間のため、本校設備の利用はできないのでそのつもりで準備をすすめること。

 

5 授業方法

 いかに相手に理解させるか,その工夫をする。そのためには,プレゼンテーションソフト,Webページ,ポスター,実物,体験,模型など様々な手段が考えられる。

 

※調査分析や試験結果の分析などでデータベースソフトの活用(これだけは,本講座での学習を行っていない)が必要で有れば,質問せよ。クラリスデータベースの利用なら可能である。

※調査のための道具としては,コンピュータだけではない。場合によっては,新聞や時刻表,白書等の方が優れているかもしれない。

※何よりも自分たちで歩き回るなどして情報をあつめる。

 

6 試験

 みんなの出来がよいと、授業班に高い評価が与えられる(ただし、授業内容や試験内容によって係数をつける)。

 授業は10分くらいしかないので、みんなの成績を上げるためには、いろいろな方法も考えられる。たとえばあらかじめ授業内容Webページを立ち上げておき、これでみんなに勉強させておく。メールで学習内容を送り、添削指導する、等々。

・試験内容及び正解は,自分の班の授業前の土曜日(これが休みの場合は金曜日)までにteach-aに添付書類で提出する(原則的にはペーパーメディアにより実施するが、コンピュータネットワークを活用した試験の提案も歓迎する)。

・テストは5問以上(一人1問以上作成する),解答は原則として5択(これにどうしてもなじまない試験内容については相談せよ)とする。

・テストにカラー映像や音声などが必要な場合は,印刷物と別にコンピュータネットワークで扱えるように準備しておき,ペーパーメディアの試験を補うなど、試験そのものも創意工夫をする。

・学習成果について分析のできる内容,数を工夫せよ。試験の目的は、自分たちの伝えたかったことがどう伝わったのかを自己分析評価することにある。

・試験後採点分析し,試験結果,分析内容を各自のwebページにのせて報告する(予定)。この際、他の班員の分析が参照できるようにリンクの張り方を工夫する。もちろん,各自が独自の分析をすべきである。特に,自分が担当した分野を中心に分析すると良い。

 

7 評価

・授業のわかり易さ、オリジナリティなど(楽しさなんかも考慮したい)

・相手に伝えるべき内容をどれだけ理解させることができたか。

・他のグループの授業をどれだけ理解できたか。

・授業のための工夫をできたか。

・班員間の協同作業ができたか。

・調査内容,授業の内容及び方法など。

・分析の的確性と独自性

 

8 授業内容について

授業タイプを次の2つのどちらかとする。

ただし,Bタイプは少なくとも1班以上,4班以内(早いものがち,もしくは遅いもの負け?)

いずれの場合も、できるだけ自分たちの足で集めたデータに基づいて授業を構築したい。

 

A 情報に関連する以下の内容例についての講義的な授業

参考例(実施テーマは1つ。以下の項目にこだわることはない)

・電子商取引

・情報通信ネットワーク

・コンピュータの仕組み

・コンピュータによる情報処理

・コンピュータにおける情報の表し方

・モデル化,シミュレーション

・情報化社会とモラル

・データベースの利用

・著作権

・アナログとディジタル

POSシステム

・テクノストレス

・コンピュータ犯罪

・情報社会を支える情報技術

・情報化社会における人間への配慮

・情報技術の進展と社会への影響

・情報のディジタル化

・コミュニケーション

・情報の週種,発信と個人の責任

ATM

・情報機器発達の歴史

・ネットワーク社会の明暗

・受信情報の信頼性,信憑性の吟味について

21世紀の情報化社会

・ロボット

・携帯電話、PHS、未来の通信

・情報通信の歴史

・その他

 

B 情報の処理,活用を活かして問題解決そのものを行い,提案を示す発表

 できるだけ現実的で身近な問題をいかに解決したか。またその解としての具体的提案の提示

 この場合,試験は,分析過程や提案に対する理解度のほか,提案そのものに対する評価(試験とはちょっと異なるが)等を実施する。具体的なデータの裏付けに基づく提案であって欲しい。

 

参考例

POSシステムはどのように機能しているのか。本当にその機能がどのようにはたらいているのかを検証するために,およそ売れていそうもない商品を買い続けたときに,その商品の数が本当に増えたか。

・もっとも適切な,本校靴箱を設計する。このためには,生徒の靴の大きさ,保管する数などをリサーチし,昇降口の大きさ形状など多面的な分析に基づき,具体的に提案する。また,校内のリサーチが一般的といえるかどうか,靴屋や関連業界からのリサーチも必要であろう。

・高校生にとって,必要な小遣いはいくらか。

・自分たちが学んでいる学校やその周辺,あるいは済んでいる地域社会に必要な公共施設は何か,具体的にどんなものであるべきかを示す。その根拠もデータに基づいて示す。

・校内に必要と考える施設,設備の提案。

・世界に届け私たちの主張

・私たちの修学旅行の提案

・地球を救おう

・エネルギー資源と地球環境

・未来の我が家を建てる

 自分が45歳になったときに予想される家族構成から,実現可能と思われる理想の家を提案する。予想される家族構成、収入、建築費、住宅事情などについて調査し,裏づけに基づく提案とする。

・街の人が必要とする公共施設の提案

 どんな公共施設をどこに必要としているのか,調査に基づき、愚痴的な提案を示す。

・公園を作ろう

 自分たちの町のどこに,どんなニーズにこたえた公園を作るかを決め,実際の公園を参考にして、具体的な公園を提案する。

・現代高校生像はこれだ

 現代高校生の典型的な姿を徹底的に調べ上げる。日本、県、世界、クラスなど対象を絞って典型像を比較するなど,情報提示方法を工夫する。また、調査項目は,高校生像をどんな視点から描こうとするか,その意図が伝わるように決める。

・学大附属高校校舎建て替え提案;こんな校舎、キャンパスにしよう。

・他校紹介

 2つの学校で連携してお互いの学校を紹介する。

・いじめの現状と対策

・喫煙について考える

・その他

 

 いずれにしても,

・単純にどこかの情報をかき集めてきただけはだめ。

・自ら新たな情報を加わえる工夫が欲しい。

 

9 今日の作業

・各自のホームディレクトリ内のファイルの整理,廃棄をし,できるだけメモリー消費を減らす。

・リーダー及び班員の報告;班のリーダーが班員の出席番号、氏名をteach-aに報告する。

以下各自でteach-aにメールする。

・授業テーマの決定,報告

・今後の予定の決定,報告

・本日の活動報告

***** あるクラスの班毎の授業テーマ *****

1班 タイプA;アナログとディジタル

2班 タイプA;視聴率の仕組み

3班 タイプB;旅行に一番適する国はどこか

4班 タイプA;ネット犯罪について

5班 タイプA;ハッキング

6班 タイプB;理想の通学かばん

7班 タイプA;BSデジタル放送

8班 タイプB;高校生の好きな音楽

9班 タイプA;ネット詐欺

***** 情報 3学期評価について *****

 3学期情報の評価は、以下のようにつけます。必要な提出物を、期限までに確実に提出しなさい。

 

 提出先は、

*電子メールの場合 teach-a@gakugei-hs.setagaya.tokyo.jp

Webの場合    各自のホームページ トップページに「3学期レポート」というタイトルでリンクをはる。

*印刷物の場合   物理研究室 川角まで

 

締切 3/14 16

 

1 授業中での各班の授業内容

 内容、表現、分かりやすさ、工夫などで総合評価

 授業内容については、プレゼンテーション、プリントなどを作った班は、これを(電子ファイルで)提出する(サイズが1M以下ならメール添付でもよい)。お話しだけであった班は、その内容を、ホームページ、電子メール、ワープロ出力などで提出。

 なお、いずれの場合も、自分がどこを担当したのかを明確に示しておくこと。

 

2 各班が実施した試験の個人結果

 各班で実施した試験の受験者の点数を100点満点で評価する。この点数は、試験をやった各班ごとに表にして電子メール添付ファイルとして代表者が送る。

クラリスまたはexcelの表計算ファイルとし、

 ファイル名 「試験結果A1班」 の様にする。

 その班が提出をサボると他の人の評価が下がってしまうことになりかねない!!

 

3 試験結果に基づく自分の班の授業分析レポート(全員が提出)

 ホームページ、電子メール、ワープロ出力、手書きレポート(手書きのほうが効果的、または止むを得ない場合)による。なお,具体的で定量的なデータに基づく分析であることとし,表計算などを用いて分かりやすいレポートを作る。

*************************

3.3           今後の教科教育のためのコンピュータネットワーク環境

 これまでのコンピュータネットワークの活用実践により,教科教育での利用価値の高さが認識されるようになってきた。このため,今後はますます多くの授業でのコンピュータネットワークの活用が増えるに違いない。この活用を支えるためには,高速・大容量のサーバーと高速・広帯域のネットワークが要求されてくるに違いない。

 特に,これまでの視聴覚教材よりももっと手軽で使い勝手のよい動画クリップをデジタルファイルとしてサーバーに蓄えておき,あらゆる授業場面で活用できるネットワーク構造を作り上げておけば,その活用価値はきわめて大きい。現在のパソコンシステムは, 特別な知識や技能の無い者にでも,そのようなデジタルコンテンツを作ることは容易である。おそらく一番問題となるのは,ネットワークの整備であろう。端末やサーバーなどは,必要となったときに最新の機器を導入すれば間に合う。ところが,ネットワークに関しては,たとえ校内だけでも,急には構築できない。ましてや,地方自治体(教育委員会)レベルでの学校間を接続するスクールネットワーク,そのネットワークを国内レベルで統合的に接続するエデュケーションネットワークといった(本校教育工学委員会が1996年度の附属学校部研究紀要で提案している)学校教育用ネットワークとなれば,大規模で緻密なネットワーク構想と工事が必要となる。

 本校教育工学委員会では,まずは各教科教育に活用できる動画クリップを中心としたデータベースの構築とその配信準備に入ることとした。最終的には,本校の教育データベースを高速回線を使って日本のあらゆる学校が自由に活用できるシステムまで育てたいと考えている。

 このための初期段階として,校内に図3.3 に示すようなネットワークを構築した。あらゆる部屋を最低でも100Baseでつなぎ,多数の同時アクセスや動画のような高速ファイル転送を要する場面にも対応できる環境とした。これにつながる情報コンセントは,トイレと更衣室を除くあらゆる部屋に設置されている。このねらいは,学校生活のあらゆる場面でのコンピュータネットワークの活用環境を提供することにある。特に,あらゆる教科でこれまでの授業を支援するコンピュータネットワーク環境を提供することにある。

 

<ここに,図3.3 本校校内ネットワーク(2000年度) をいれる>

 

3.3.1 ファイル配信の可能性

 教科教育をよりよく実現するためには,たとえコンピュータネットワークが使えても,使うための教室移動や機器の搬入,使用方法の習熟など多くの努力を必要とするのでは,現実的な活用はありえない。テレビ,ビデオや電話くらい簡単に使えるものでなければいけない。しかも,毎日,毎時間活用することを考えれば,必要なファイルは必要なときだけ端末上にあるのがよい。なおかつ,その情報を生徒が家庭などで復習にも使えることが望ましい。これまで,視聴覚教材を活用しても,その多くは授業中に見聞きするだけで,復習の際に再度生徒自身がその教材を利用することは困難であった。

 このような条件を満たすようなシステム開発はまだされてはいないようだが,校内ネットワークであればローコストでのVOD(ビデオ オン デマンド)システムやODPS(オン デマンド プログラム サービス)システムは実用化されており,今後の発展は期待できる。その一例をSoft On Net社の製品から見てみる。

(1)      ezs VOD

 VOD サーバー

Windows2000,NT

Pentium500MHz以上

RAM512MB

MPEGキャプチャーボード

VOD クライアント

              Windows95,98,2000,NT

Pentium133MHz以上

RAM32MB

 これで,最大8時間連続再生(もちろんそれなりのHD容量は必要である),MPEGデータの高速Streamingが可能で,1サーバーに60台までのクライアントが接続できる。もちろん,VODと同時にインターネット接続も可能である。普通の授業場面では,これほどのVOD能力は要らないが,語学学習や自学自習などには有効かもしれない。

(2)      AMS Ziggit

 これはODPSの例である。サーバーもクライアントも(1)に示す水準でよい。主な働きは,クライアント側のWebBrowserからの要求で,OnDemandでアプリケーションプログラム(ワープロ,表計算,マルチメディアソフトなど何でも可能)を配信し,終了時には再利用できない状態とする。プログラムをクライアントにインストールするのではないが,アプリケーションプログラムそのものは,クライアント上で動作するので,サーバーとの交信がなく,サーバーやネットワークへの負荷が少ない。クライアント数が増えるとそのシステムセットアップやバージョンアップだけでも大変な作業となるが, ODPSによりその必要性は無くなる。

..2 校外ネットワークの高速化の可能性

 本校校内ネットワークは100Baseにしたものの,外部との接続は1.Mのままである。もちろん,現在のところ,これで十分に機能している。しかし,先に述べたような動画クリップを中心とするデータベースの提供を家庭の生徒や他校にまで提供するのならば,将来的にはさらに高速な回線が必要となってくる。日本のネットワーク環境の現状はどうなっているのだろうか。

(1)      岡山市地域情報水道構想

 国内では,長岡市や岡山市などいくつかの地域で,地方自治体が主体となって,100M以上のネットワークが構築されつつある。この計画では,各家庭に100Mの回線を月額2000円で提供することになっている。公共事業としてネットワークを構築し,ユーザーを多数確保すれば,これを対象としたあらたなIT産業が生まれる。そんな構想である。以下に,直接岡山市に視察に行った田中義洋教官,安井崇教官からの,視察報告概略をしめす。

 

 岡山市地域情報水道構想実験の概要について説明を受ける。ケーブルテレビの恩恵を受けていない、御南地区と西大寺地区で、モニタを1000世帯募集して実験を開始するところで、3月末から始動するとのこと。光ファイバで、家庭は100MB/秒、学校・事業所は1GB/秒で、つなぐという。
 そもそも、21世紀に岡山市は、リットシティを目指している。「リット(Lit)」とは英語の「ライト(Light)」の過去分詞形で、「光化された」という意味。リットシティとは、光ファイバによりネットワークが整備された情報都市を表している。現在、世界中の自治体が光ファイバを活用した情報ネットワークの整備を進めつつある中で、岡山市も産学官が一体となった魅力ある都市づくり、地域経済・地域社会の活性化を目指し、産業発展の原動力となる「Lit City岡山」を実現していこうとしている。そのきっかけは、岡山市長の萩原誠司氏が姉妹都市であるアメリカのカリフォルニア州サンノゼ市を訪問した際に、その光ファイバ網の様子を見て、これからの時代は、情報が鍵を握ると直感したことによるという。
 「国際・福祉都市」を目指す岡山市では、
.笑顔が集う中心市街地の再生
.生きる力を育む教育の充実
.岡山を活かす環境の整備
.人がふれあう福祉社会づくり
.世界に自慢できる国際都市の実現
という5大目標を達成するために、家庭・事業所等に光ファイバを活用した情報ネットワーク網を整備する実験モデル事業「岡山市地域情報水道構想」を進めている。岡山市では、「リットシティ」を合言葉に、市民が気軽で身近に情報を利用できる街をめざして各種事業を展開していくことで、「Lit City岡山」を広くアピールしたいとしている。
 なお、詳細は、以下のアドレスを参照されたい。
http://www.city.okayama.okayama.jp/index_top/litcity_top.htm

 この計画で最も遅れていると思われるのは,高速回線を活用するに値するコンテンツ開発である。本校が開発しようとしているものは,ちょうどこのコンテンツに当たる。教育情報コンテンツを活用しようとしている岡山市学芸館高等学校の視察についての概要報告を以下に示す。

 

 岡山市学芸館高等学校は、普通科、英語科、食物調理科からなっており、各科によって、コンピュータや情報に関する教育のスタンスが異なるようであった。
 まず、普通科はさらに、特別進学コース、吹奏楽特別コース、美術デザインコース、総合コースに分かれ、美術デザインコースは、1人1台のマッキントッシュを完備し(CG教室)、CGの基礎をはじめとして、3Dソフトやより高度な画像編集を扱っていて、CG系の生徒の場合、「コンピュータ造形」(4単位)が、2、3年生で必修になっている。マッキントッシュは、確か、7600を使っていて、予算の関係で、この4月からは、ウインドウズマシーンとの混在にならざるを得ないということであった。美術デザインコースの生徒は、美術工芸部に所属することになっているため、放課後も、熱心に作品製作に取り組んでいるとのことでした。事実、美術デザインコースの教室や、廊下には、卒業生の作品が所狭しと並んでいた。
 なお、普通科の他のコースに対しては、入学直後に3、4時間コンピュータの使い方を指導するくらいで、ようやく昨年の秋に、全員にメールアドレスを与えたところで、これからだとのことです。なお、美術デザインコース以外のコンピュータはすべて、ウインドウズマシーンで、第一電算室と、第二電算室に、各45台程度ずつ配置されているとのことです(ただし、第一電算室は改修中でした)。
 また、英語科は、入学時にコンピュータを各個人に購入してもらっており、メールその他で活用していた。英語科専用のインターネットルームがあり、各個人のコンピュータをネットワークにつなげるような形になっていた。多くは、ノート型の購入を勧めていたのですが、耐久性でデスクトップの購入を勧めた年もあるなど、試行錯誤しているところもある。ちなみに、英語科は、2年次に、オーストラリアに1年間留学することになっていて、そこでもインターネットの活用が成果をあげるのに役立っているとのこと。
 なお、食物調理科は、「家庭情報処理」(1年生2単位)の中で、第一電算室か、第二電算室を使って、「一太郎」を中心としたソフトを使って、いろいろと実習をしている。
 あと、見学はしませんでしたが、図書館にも、ウインドウズマシーンが入れられており、さまざまな形で、活用されている。
 生徒用端末数としては、ウインドウズマシーンが132台、マッキントッシュが40台である。
 岡山市地域情報水道構想実験の西大寺地区の中核校として、光ファイバが接続されており、今後、教育用のコンテンツを開発していきたいとのこと。

 岡山市地域情報水道構想実験とともに、今後のいろいろな取り組みが楽しみな、活力のある学校であった。

 なお、詳細は、以下のアドレスを参照されたい。
http://www.gakugeikan.ed.jp/

 

(2)      世田谷地区のブロードバンド

 岡山市などの公共事業に対して,東京都内では商業ベースでの100M回線が構築されつつある。世田谷地区から始まっているのは,有線ブロードネットワークスの回線である。この場合,100M,10IPに対して月額9800円,5IPに対して4800円としている。

 この料金と速度であれば,きわめて現実的な動画コンテンツ配信が可能であり,家庭での受信も現実的である。本校と附属世田谷小学校や中学校とはやや地理的にはなれている。しかし,この水準のネットワークで学校間を結ぶことができれば,現在進行中の小中高校の一貫教育も,時差も距離差も解消される部分は少なからずある。一貫教育での地理的な壁を,高速回線が取り除いてくれる可能性がある。

 もちろん,この高速回線が国内の教育機関を結ぶようになれば,日本の教育に大きな変革が起こるかもしれない。

 

 4 教科教育と情報教育の関連

4.1 教育の情報化によって目指すべき目標

 教育の情報化によって目指すべき目標を各学校段階ごとに見ていく。「教育の情報化」報告では、

  「各学校段階にわたり、すべての教科等の指導において、児童生徒がコンピュータ・情報通信ネットワーク等の情報手段を積極的に活用しながら、主体的に学び考え、自分の意見を積極的に主張して授業に参加できるような学習活動を充実すべきことが期待されている。」とした上で、こどもたちがどの様に変わっていくかを以下のように考えている。

   「・ 小学校のうちに、すべての子どもたちがコンピュータ・インターネット等をごく身近な道具として慣れ親しみ、何の抵抗感もなく自由に使いこなせるようにする。

    ・ 中学校を卒業するまでに、すべての子どもたちがコンピュータ・インターネット等を、主体的に学び他者とコミュニケーションを行う道具として積極的に活用できるようにする。

    ・ 高等学校においては、コンピュータ・インターネット等の活用を通じて、子どもたちが主体的に学び考え、自分の意見を積極的に主張できる能力を一層伸ばすとともに、海外との交流も含めた多様な目的のために、より高度に活用できるようにする。

    ・ 小学校のうちから子どもの発達段階に応じて、情報モラルに関する指導を充実させるとともに、豊かな人間性を育む「心の教育」も一層の充実を図る。」

 

4.2 各教科(科目)からのデジタルコンテンツ提案

 ほぼすべての教科・科目から、普段から授業で必要と考えられている映像、すでに開発されておりデジタル化する価値があると考えられるものが、多数提案されている。

 教科によってすでにいくつかのテーマに絞られている場合、ある程度絞られていながらなおかつアイディアも併記したものなど様々である。

 多くのコンテンツは、デジタル化された動画であるが、30秒から長くても3分以内のビデオクリップを中心として開発する。可能な限り、コンピュータ上でのデジタルノンリニア編集を本校教育工学委員の手により、完成させる。この際、必要に応じて、各企業の力を借りられればと考えている。。

 今後、ネットワークを通じて出来るだけ多くの学習資源を配信できるデータベースを構築するためには、全国の小学校、中学校、高等学校の教員が、自ら必要とするものを自ら開発していける環境が望ましい。もちろん、多くの教員は日々の生徒指導に追われ、そのような時間はきわめてとりにくい。しかし、全国規模で考えれば、少なからぬ学習材の開発能力はあるに違いない。

 また次のようなことを意識した必要コンテンツ提案となっている。中等教育の現場は、各教科担当者が授業を行うため同じ学校の中でも教科間の壁がある。より合理的に学べるよう現在の教科の形態があるわけである。実際のところどの教科にもその内容に総合的な要素が多くある。そして我々は日頃から、どのようにして生徒が興味を持っている事柄と関連づけて、各教科内容を伝えるかを工夫している。しかし実際のところ、その興味関心事も生徒によってさまざまであり、個に応じた教科間の隙間を数多く提示するのは困難である。今回のプロジェクトが、単に教科単位の研究開発にとどまってしまえば,最終的に教科間の壁を残したコンテンツのみになってしまう。これは、クロスカリキュラムの必要性、総合学習重要性が生かされないだけではなく、日常的な各教科の授業の中で重視する要素が抜け落ちてしまう恐れがある。またそういった教材は、他教科のジャンルに入るものであることが多く、一教科の教員が教材として準備しにくいものである。ここにあげたものは、各教科の縦軸となるそれぞれの専門的内容のみでなく教科を横につなぎその隙間にある重要な要素を割り出し、立体的な授業を可能とする、現場教員がまさに必要としているコンテンツの提案である。

 

4.2.1国語

現代文

 

「羅生門」の教材化

 芥川龍之介の「羅生門」は高校一年生の定番教材である。この小説の舞台である羅城門についてのイメージを明確に描くことが作品理解に欠かせない。しかし、実際に生徒が抱くイメージは非常に卑小なものである。

 国語便覧に復元模型の写真が載っているが、小さな写真からその大きさを実感するのは難しい。さらに、「羅生門」は荒廃した門であるのに、写真は新築の門であり、参考にならない。

 そこで、CGによって荒廃した羅城門を見せ、実際に門の中を動き回ることができるようにする。このことにより怪奇性がいっそう高まり、主人公である「下人」の行動の緊迫感を理解することも容易になる。

 「舞姫」の教材化

 森鴎外の「舞姫」は、擬古文であることが理解を困難にしている。また、明治時代の日本をイメージできず、従って、留学したヨーロッパ第一の都ベルリンを見た主人公の驚きの感覚を共有することも困難である。

 そこで当時の日本の様子を写真や動画で示し、併せてベルリンの様子を示すことで、当時の日本人が抱いた欧米との格差について視覚的に理解させることができる。 

 

古典

 教科書では図版の数が厳しく制限されており、また、カラー版の使用にも限界がある。絵を通した享受が主であったと思われる古典作品について、絵巻や挿絵を原色に近い形で全巻提供し、詞書も読める字体に直したものを作成することで、作品が享受された時代に近い形で作品に触れ、その魅力を追体験させることをねらっている。現在の漫画の楽しみ方と大きく違わないことに気付くことで、古典の魅力を知ることができ、文章そのものへ挑戦するきっかけを与えられよう。これは、生涯教育の視点からも有意義であり、また、人間の心を推し量ることにもつながってこよう。

 信貴山縁起(飛倉)、御伽草子(浦島太郎)、南総里見八犬伝、源氏物語絵巻。これらはすべて静止画。動画としては、作品の舞台となった地の現在の様子。八犬伝や源氏物語絵巻では、映画や歌舞伎の舞台を参照できるようにする。第1年次は、南総里見八犬伝と信貴山縁起について。それぞれ、絵巻や挿絵をすべて詞書や本文とともに撮影する。そして、詞書や本文を現代の字体にして貼り込む。現在の舞台の地を見られるように組み込む。作品中の登場人物の視点で場面を見られるように加工する。

 

 

 4.2.2地歴・公民

日本史・世界史・地理・公民ともに

「ビジュアル資料にもとづいて豊かなイメージを喚起する学習教材の開発」

 

日本史

 現在、歴史学習は教科書、資料集など文字、画像資料によるものが中心になっている。当然のことながら、教材が過去に存在したもので、今日失われている場合には、体験的な理解はできない。しかし、最近では博物館等で復元資料によって、当時の様子を追体験できるような展示をする例が増えている。今回の研究では、コンピュータ・グラフィックによる歴史資料の復元、その教材化によるシュミレーション体験を通して歴史学習の深化を目指している。

 

 日本史の新学習指導要領においては、従来型の通史の講義だけではなく、今日的関心に基づいてテーマ別に歴史を掘り下げることが重視されている(日本史A・日本史B 2 内容 歴史の考察)。また、歴史教育の現場では、子供の過去に対する関心そのものが急速に失われてきているということが、近年しばしば指摘されている。こうした状況に対応して、とかく現在の事象・流行のみに目を奪われがちな生徒の興味関心を歴史的世界に導いていくためには、過去の世界を臨場感を持って追体験できるような新しい教材の開発が必要であろう。

 そこでここでは多くの教科書で取り上げられていることに加え、しばしば時代を画する大きな切れ目となってきた戦争と、都市化の進展した今日の社会で生きる生徒にとって比較的関心の持ちやすい(したがって、歴史の世界への導入教材として適切な)都市に注目して歴史の世界を再現した動画資料を作成すること提案したい。なお、戦争や都市については、近年新たな研究や発掘が相次いでおり、内容の意外性という点からも生徒の関心に応えることができると考えられる。

 

<戦場の歴史>

1 戦う弥生人

  環濠集落・高地性集落の遺跡の発掘時の状態と防御施設・のろし等の復元映像。

2 武器の誕生

  縄文時代と弥生時代の鑑を復元し、殺傷力の比較実験を行う映像。

3 平家物語の世界

  その実像馬や武具、戦争の段取りなどを正確に考証した復元映像。

4 戦場は稼ぎの場

  戦国時代の雑兵雑兵・足軽の視線でみた戦国時代の合戦場の復元映像。

5 子どもの見た西南戦争

  子どもの視線でみた西南戦争の時の熊本市街、西郷軍の評判の復元映像。

 

<都市の興亡>

1 古代都城の世界 藤原京・平城京・平安京の町並の再現映像と比較検討の資料。

2 黄金の都平泉の興亡

3 十三湊の隆盛と没落

4 戦国城下町の興亡 一乗谷の建設・町並・減亡の再現映像と現在の様子。

5 天下布武の中心 安土 安土城と城下町の復元映像。

6 本願寺から大坂城へ 石山本願寺、豊臣秀吉の大坂城、徳川幕府の大坂城、昭和の大阪城の比較。

7 神田上水の建設 江戸の上水道神田上水はどのように作られたか。

8 江戸から東京へ 参勤交代の中止、幕末の治安の悪化、戊辰戦争、「遷都」の経過を映像で復元。

9 城下町が村になる 県庁所在地などにならなかった城下町の衰退や城の破却を映像で復元。

 

<都市に暮らす人々>

1 長屋王邸の1年  木簡などの史科にもとづく復元映像。

2 右衛門尉一家の生活  『新猿楽記』に登場する家族の生活を主人右衛門尉が紹介するスタイルで映像化。

3 墓が足らない町江戸近世の墓地遺跡の解説と日用層の生活の再現映像。

4 人力車夫の1日  都市下層社会の代表的職業だった人力車夫の1日を映像化。

5 田園調布  田園調布開発のいきさつの解説と、現存建物を利用した文化住宅の生活の映像化。

 

<歴史の中の旅>

 さまざまな旅行・移動について、再現映像と現況を組み合わせた映像を作る。

 遣唐使  琉球王国の貿易船と久米村の人々の生活  

 北前船  幕末の海外留学   南米移民

 

<抵抗の作法>

 さまざまな時代の一揆の模様を絵図・巻物などを利用して再現。一揆の際の持ち物や音などをなるべく正確に考証する

  土一揆  一向一揆  百姓一揆  飢饉とうちこわし 

  世直し一揆と新政反対一揆

 

<衣食・芸農の歴史>

1 女はこうして女になる  服装の歴史女性の服装の時代ごとの変遷の再現と男女の違いが服装にどのように表現されているかの解説

2 北海道産こんぶの旅  海連の発達とこんぶを使った料理の広がり、各地の料理の違いを映像にまとめる

3 ブームは歌舞伎からやってくる  歌舞伎から宮地芝居、寄席へと広がって江戸時代の流行のあり方を、佐倉宗吾郎を例に解説する。

 

<民衆のイメージの世界>

1 黒い幻の船  ペリー来航が人々の目にどのように映ったか、当時の錦絵(天狗の顔をしたペリーなど)を利用してイメージ映像にまとめる

2 コレラ襲来  明冶初期のコレラの流行や政府のコレラ対策が人々の目にどのように映ったか、当時の錦絵(トラとして描かれたコレラなど)を利用してイメージ映像にまとめる。

3 天皇のイメージ  戦略明治天皇の写真と「御真影」の違いを明らかにして、天皇がどのようなイメージを人々に植え付けようとしていたかを解説する。

4 「弁士中止」  演説会のパフォーマンス  自由民権運動の演説会の様子を映像で再現するとともに、三田演説館などを紹介。

5 歩きまわる天皇  地方巡幸の効果  明治天皇と昭和天皇の地方巡幸の再現ならびに解説映像。

 

<新しい歴史の調べ方>

1 土器の破片からなぜ年代がわかるのか

  炭素14法などの自然科学的な年代測定法の解説映像。

2 稲はどこからやってきたか

 プラント・オパールの分析など、新しい分析方法の紹介と最新の稲作起源論の紹介。

3 古墳はこうして作られた

  大仙陵古墳の建設過程の再現映像。

4 あなたは誰?

  「足利尊氏像」のモデル「足利尊氏像」を使って肖像画の分析方法を見せるとともに、本当のモデルが誰かを解明する。

5 天守閣のない城

  中世城郭を歩く八王子城の現状と再現映像。

6 絵にかかれた戦争

  第2次世界大戦中の大型戦争画の解説。

 

 

世界史

以下のようなテーマ

1、都市の構造と歴史

  古い歴史を持つ古代から現代までの都市の姿の変化(建築物、道路などの変化)をCGで表現してある教材。

  世界史授業の中でよく使う都市には

  ヨーロッパ方面、ローマ、ロンドン、パリ、ベルリン、ウィーン

  アジア方面   イスタンブル、カイロ、バグダード、北京、広州、西安(長安)、          ソウル イェルサレム 

  アメリカ方面  メキシコシティー、ニューヨークなど

 

2、古代遺跡の再現CD

  英語で言えば「Now and then」というか、現在保存されている遺跡をCGを使って再現したもの

  例 パルテノン神殿、秦の始皇帝陵墓、カラコルム(この3つはNHKにあり)、

    ペルセポリス、バビロン、テル=エル=アマルナ、クノッソス、ミケーネ、

    トロイ、フォノロマーノ、コロッセウム、水道橋、アッピア街道、

    ロマネスクやゴシック様式の聖堂のCG

    ハラッパー、モエンジョ=ダロ、仰韶、竜山、河姆渡、良渚など

 

3、古代から現現代までの衣食住環境の変化をCG化したもの

衣 中国、インド、西アジア、ヨーロッパにおける古代、中世、近世、近代、現代の男女の衣装の変化を具体化する。

 単純な歴史的変遷のCGでもよいが、階層別の衣装、衣装を着た人間の3次元CG、衣装の変化の意味・・・女性のスカート長さから女性解放運動が理解できたり、キュロット姿の貴族と長ズボン(サンキュロット)を比較してフランス革命における敵対的階層の別を認識できるようなもの、さらに色が持つ階級差などが認識できることが理想である。

 

食 ヨーロッパで言えば中世、近世、近代における上流階級の料理の内容変化と食事作法などが理解できるCG。

 砂糖、茶、コーヒー、カカオ(チョコレート)などの原料から製品までの過程とヨーロッパにおける嗜好品の摂取方法の変化を具体化したもの。

 新大陸作物、例えばジャガイモ、トマト、とうもろこしなどのそのほかの地域に伝播した時の調理方法の変化が理解できるもの。

 

住 ヨーロッパ、西アジアイスラム世界、インド、中国などの古代、中世、近代など各階層の住居形態を3次元CG化したもの。これによって生活形態や家族構成、子どものあり方などが認識できる。

 

4、「まなざし」の理解のためのCG

 大航海時代以前のヨーロッパのアジアや新大陸への「まなざし」。19世紀帝国主義時代におけるヨーロッパのアジアやオセアニアに対する「まなざし」などをCGを使って再現する。

 逆にアジアからのヨーロッパ認識も必要である(異文化交流やネットワークの形成と関連して)

 

5、戦闘・戦争の場面のCG化

  古代から現代での戦闘・戦争をCG化して戦闘経過を理解できるようにしたもの。

  例、サラミスの海戦、マラトンの戦い、イッソスの戦い、アレクサンドロス大王

    の東征ペロポンネソス戦争やペルシア戦争の経過、トゥール=ポワティエ間

    の戦い

               レパントの海戦など古代から、現代までの戦闘、戦争場面の再現

 

6、歴史上の技術の再現CG

 産業革命以後はイギリスを中心に産業考古学が発達していて、技術の保存が行われ、機械や道具などの再現も容易になっている。しかし中世までのヨーロッパやアジアの技術や発明は再現できないことが多い。それをCGを使って3次元の世界で再現してどのような発明かあるいは機械がどのような仕組みで動くかを具体化する。

 

政治・経済

 ニュース画面の「資料映像」にあたる動画ファイルを説明の補助として各項3分〜5分で見せることを想定。

 各社教科書との対応可。

1 政治とは何か

1.1 政治の意義 

   アウシュビッツなどの強制収容所の映像

   東京への核爆弾投下のシミュレーション映像

   核の冬の様子

1.2 国内政治における闘争・実力行使

   国会の強行採決と乱闘

   成田空港建設時の衝突

1.3 国際政治における闘争・実力行使

   キューバ危機におけるケネデイの決定

   アメリカ・ソ連の核開発競争

2 政治の実際

2.1 国会審議の過程

2.2 裁判所の手続き過程

2.3 内閣閣議のシミュレーション

3 選挙の実情

3.1 英国の下院議員選挙

   候補者決定過程

   選挙運動

   腐敗防止法の実態

3.2 米国大統領選挙

   予備選挙・本選挙の過程

3.3 日本の選挙運動

4 経済活動の実態 

4.1 大規模工場における生産の様子

4.2 高校生アルバイト労働の現場

4.3 エネルギーの生産と消費

5 日本の資本主義経済発展過程

5.1 金融恐慌・昭和恐慌

5.2 植民地形成過程

5.3 戦後の経済と生活実態

5.4 朝鮮戦争特需

5.5 高度経済成長

5.6 経済統計グラフチャート

6 市場経済

6.1 生鮮食料品の価格変動

6.2 株価変動チャート

7 国際経済

7.1 世界恐慌時の企業・庶民の実情

7.2 世界恐慌時の株価・物価指数・企業倒産件数・

   失業者数などの経年変化チャート

7.3 1990年代後半アジア経済危機の統計

8 公害

8.1 被害者の実情

8.2 裁判の様子

9 雇用動向

9.1 失業率推移

9.2 女子労働の分析チャート

10 福祉

10.1 北欧における在宅福祉・施設の実情

10.2 日本におけるホームヘルパー・

   デイケアセンター・ショートステイの実情 

 

現代社会・倫理

1 環境・家族・情報・消費・生命等トピック別ファイル

2 民主主義・人権・責任・正義等テーマ別ファイル

3 統計学にもとづく資料処理・分析方法解説ファイル

4 科学史・科学哲学に関する資料ファイル(発明・発見と失敗の歴史)

 

地理

「地図の機能と活用」単元における「空中写真、画像と地図」・「地形図を読む」と「地域を調べる」単元の「大都市」「農山村」「工業都市」を解説するための資料として提案する。東京都のいくつかの地域を素材とし、地図画像と立体地形CG映像と実写画像の組み合わせによって、河川・地形、山村・農村、都市計画と住宅、都市の機能集積、海浜・港湾、等々の地理的理解を促す資料を作ることができる。

 小・中学校の社会科や総合学習資料としても活用できる内容になっている。

1 地図映像・ヘリコプター空撮映像・コンピュータグラフィックの組み合わせによる5分程度の資料ファイルをたくさん用意する

1.1 世界の地形資料

 平地と河川 山地 海洋等の特色ある地形と人間の営み

1.2 世界の気候資料

 気候特性を表わす映像と農業を中心とする人間の営み

2 世界の料理資料

 気候・地形・文化による食材と料理・食事の様子

3 地球環境の衛星分析画像など

4 具体的授業設定例「神田川沿いを歩く」

 神田川は、東京都三鷹市の井の頭池を源とし、両国橋付近で隅田川に合流して、東京湾へ流れ込む小河川である.神田川の上流部の杉並・中野区では住宅地となっているが、中流部の新宿区付近になると商業地区が、文京区付近では工業地区や文教地区が見られるようになり、下流部の千代田区では業務地区が広がっている.したがって神田川沿岸を歩くことにより、日本の首都としての都市構造のほぼ全容を眺めることができる.また、沿岸には、神田川が形成した斜面や谷地などの微地形が多く残されており、これらが東京の都市構造に多少の影響を与えていることはいうまでもない.

 以上のことから、高等学校「地理A」のなかの都市構造の学習において、神田川沿岸の歩行による実習が欠かせないものと思われる.いままでの高等学校の地理の学習では、教室内における地図や写真など2次元での把握・理解によるものがほとんどであった.一方で、建築技術の向上や都市の過密化により、大都市の内部では建築物の高層化や地下の利用が発達し複雑化している.よってこれからの都市構造の学習には、3次元による理解が必要であると考えられる.  しかしながら現実の学校教育の範囲では、時間的な問題や引率などの労力の問題で、このような学校外における実習を実施する機会を確保することはかなり難しい状況にある.そこで本稿では、生徒が教室の中で実習と同様の体験ができるうに、近年発達のめざましいコンピュータを用いて、神田川沿岸の景観を現実と同様に立体的に表現できる教材の開発を提案する.

 ソフトを用いて生徒が行える作業は、以下の5時限に示すとおりである.

 1時限目は、水源地である井の頭池付近の景観観察である.神田川の谷の斜面の林地が、周囲の武蔵野台地上の住宅・商業地と谷底部の公園を分け隔てている様子を立体的に描く.井の頭池の起源が分かるように、現在は消失した谷頭部斜面の湧水を復元する.この湧水量の消失以前の年次別変化と、周囲の市街地化の進展との関係を図示し、地下水量と地表被覆との関係を学ばせる.

 2時限目は、杉並区和泉付近の景観をとりあげる.ここは、台地上から斜面を下り、神田川の谷底に至るまで住宅地が広がっている.ここでは、地形別の地価や居住者の所得のデータを示し比較させ、地形(地盤の強さ)と住宅の質との関係を理解させる.また谷地に広い敷地を持つ学校やグラウンドが分布する理由を考えさせる.

 3時限目は、神田川の支流である妙正寺川および江古田川の流量について、平常時と増水時の変化を体験できるようにする.この2つの川沿岸には、洪水時の調整池を兼ねた緑地が1箇所ずつ存在する.このような調整池の役割を理解させるために、降水量と河川の流量、それに伴う調整池の貯水量を実際に値を用いてシュミレーションできるようにする.また、調整池がなかった場合の、河川の周囲の地域の増水(洪水)時の状況を体験できるようにし、谷地および台地といった地形別の洪水時の危険性

を把握させ、2時限目に学習した地価等との関係を理解させる.

 4時限目では、文京・新宿両区の境界付近の景観を観察させる.この地域の両岸には、出版・印刷業を中心とする町工場が多く分布する.さきの授業と同様に、地形・地価と土地利用の関係を考えさせる.神田川上には首都高速道路が建設されていることから、立体的な構造を把握させ、なぜこのような土地利用がされているのかを考察させる.ここでは、実際に歩いていて聞き取れるような、印刷機や首都高速道路を走行する自動車などの騒音を音声に組み込む.1日の音量の数値の変化をグラフで示し

、騒音問題についても関心を持たせる.

 5時限目は、神田川と日本橋川の分岐点にある三崎清掃作業所から、東京湾までの船旅を体験させる.これは、不燃ゴミの輸送ルートであり、現在神田川に残存する唯一の水運である.船は三崎町を出て神田川を下り始めると、まもなくまわりを切り立った崖に挟まれる.ここは、1620年に江戸幕府によって駿河台が掘削された部分で、台地上には大学や病院などが集積している.御茶ノ水駅を過ぎると台地は終了し、利根川(荒川)の開析した沖積低地となる.秋葉原の電気街、浅草橋の問屋街を抜ける

と、隅田川に合流する.隅田川に入ると、右岸には日本橋の町並みが望まれる.ウォーターフロント再開発が盛んな佃付近から埋立地へと入る.河道幅はさらに広くなり、沿岸には大きな倉庫が分布し、貨物船が停泊している.東京湾に入り、現在もゴミを埋め立てている中央防波堤外側埋立地が終点となる.

 小石川橋で分かれた日本橋川についても、現在は見られないが、神田川と同様に船の旅が楽しめるようにする.この川は、首都高速道路に被覆されながら、大手町や日本橋といった巨大高層ビルの並ぶ都心部を流れ、豊海橋で隅田川に合流する.

 神田川および日本橋川の船旅については、現在だけでなく、過去の景観を学習できる教材も用意する.江戸・明治・大正・昭和初期・終戦直後など、いくつかの映像を同じ船旅により、周囲の景観の変化を観察させる.特に可動橋の勝鬨橋が大型船舶の通過に伴って動いている様子を見せたい.これと首都高速道路のレインボーブリッジと比較することにより、橋梁の変化にも注目させる.また駿河台の開削については、原地形から現在に至るまでの、地形変化の様子を表す図を用意する.このように過去

のある時期を再現できると、歴史学習にも貢献することができるだろう.

 以上に述べたようなソフトを用意することにより、5時限程度でパソコンを使用した、生徒も楽しめる東京の野外実習を教室内で実施できる.また、これを用いた教室での学習と、現地での野外実習と組み合わせると、生徒の興味・関心・理解は一層深まるだろう.

 

4.2.3理科

物理

 生徒実験を支援するデジタル映像

     ー 音の伝わり方の理解を深める音の視覚化 ー

 自然科学の理解には、自然現象の鋭い観察と目的意識を持った生徒自らの実験が必要である。実験のための実験を言われるままに行うのでは、本来の目的は達成し得ない。生徒実験にとって大切なことは、いかに目的意識を持たせて実験に臨ませることができるかにかかっている。

 また、探求実験による理解をさらに確かなものとするためには、初期の実験目的からステップアップした発展的な実験も望まれる。

 あるいは、実験なしに講義により現象を理解させる授業展開では、もちろん現実の現象を示し、いかに科学的にこれを解釈するかが大切な話題となる。

 ここでは、視覚化や測定が困難な音の伝わり方に関する現象として、回折、干渉、定常波、ドップラー効果について、実験や講義を支援するデジタル映像を開発する。

 

1音が遅れて伝わる現象

2野外での音速測定

3実験室内での音速測定

4音の回折・干渉・定常波の視覚化

5身近なドップラー効果いろいろ

6ドップラー効果の視覚化

 

化学

コンテンツ1:分子運動・化学反応のアニメーションの作成

      (立体的な運動を可能な限り立体的にモデル化する)

 コンピュータゲームのようにリアルな動きのある3次元的映像により、運動を分子運動や化学反応のイメージを育てる。

 大きなスクリーンに投影し、生徒が原子・分子レベルの大きさになったような空間の体験ができる疑似立体視映像(3D眼鏡などを利用)を開発する。実験によっては体験できない粒子の運動概念や、粒子の衝突によって起こる化学反応のメカニズムの理解の助けになるようなアニメーションを制作する。このコンテンツは高等学校の化学教育に留まらず、中学校の理科第1分野での状態変化・化学反応、小学校での水と空気の違いなどにも応用できる。

 

コンテンツ2:化学史と世界史との関連を短くまとめた映像集の製作

 化学史を学ぶ時にとかく知識の羅列になりがちな場面で、その歴史的な背景を含めて説明するような映像集を制作する。各法則に関して3分程度の短いコンテンツでまとめる。

 さらに、生物や家庭科などとの関連した、クロスカリキュラムで使用する映像への発展も考えられる。

 

地学

  実際の地形・地質の提示に関して

 地学的な見方や考え方を育てる際に、教室内の授業だけでは不十分である。野外観察を行って初めて身につけられることも多いのである。しかし、授業の中で何回も野外観察を行うこともできないし、適切な露頭が身近な場所にあるとも限らない。そこで野外観察を行うことが望ましい地形・地質について、高校地学の内容に即して、生徒に提示することができるコンテンツを開発することをめざす。

1日本国内でのコンテンツ

・川の上流から下流への地形や堆積物の変化を調べる。

→地形が特徴的な部分の映像を集め、河床断面図を対応させて示す。その際に、堆積物の変化にも留意する。教科書には、天竜川の例が写真で紹介されているが、日本国内の1、2の河川について調べる。

・堆積環境のわかる堆積構造が、どのようにできたのかを推定する。

→例えば、地層中に残されている漣痕と、現在の波打ち際に形成される砂の模様とを比較してみる。

2世界各地でのコンテンツ

・世界の代表的な河川について、川の上流から下流への地形や堆積物の変化を調べる。

→一般に日本の河川は滝のようであるという指摘があるが、日本の映像との比較を行う。

・鍵層を使って地層と対比を試みる。

→遠く離れた地層を対比するのには、化石が用いられている。実際にアンモナイトを利用して、イギリスの地層と日本の地層の対比を行う。

 

4.2.4芸術

音楽  

1.作曲理論やアレンジの実際についての利用

 2年音楽の授業で行っているアンサンブル・アレンジの授業において

 ・MIDI機器  ・譜面作成ソフト

 ・大型プロジェクター  等の機器を用いて、生徒が具体例を耳と目で確認しながら、アレンジの仕方を学んでいく。

 

 黒板とピアノだけではどうしても、実際の音のイメージをつかみにくいが、上記の機器を用いればいわゆる『音の出る楽譜』で、ギターやドラム、ベースといったさまざまな楽器のアンサンブルを耳と目で、分かりやすく楽しく学習できるのではないかと思う。また、機器が十分に整えることにより、個別にアレンジの課題を学習することもできる。

 

2.CF制作と情報伝達の役割についての学習

 生徒が実際にCF(コマーシャル・フィルム)を制作することによって、映像のデジタル編集の仕方と、相手に必要な情報を30秒という短い時間にどれだけ効率良く伝達させるかを考える。

 

 前任校の授業で使用していた8ミリフィルムのデジタル版を制作する。

 当時はタイムコードやアフレコなどを使ったビデオ編集も、最近の環境ならば、DVを使ったノンリニア編集で簡単にできてしまう。音楽科というよりはマルチメディア的な内容と思うが、実際に制作を体験してみることで、情報伝達の方法や意義、技術などを学ぶことができ、マスメディアに対して、能動的な態度が身に付くものと考える。

 

美術

「鑑賞の授業」を支援するデジタル化教材の開発

 新学習指導要領より重視される、鑑賞の授業をやりやすくするための教材として提案する。そもそも鑑賞の授業は、用意する資料やわかりやすい資料が手に入りにくいことから、敬遠されてきた傾向がある。また、画集も同一作家のものは一冊にまとめられているが、作家を横断的に紹介しようとすると準備がとても大変であった。必要な作品を作家別、時代別、テーマ別、各国の時代ごと社会状況に整理した画像や映像がパッケージされたデータベ−スを用意することにより、鑑賞の授業が教員にとってはとてもやりやすくなる。

 

書道

運筆時の姿勢・執筆及び速度・筆圧に関する資料

 毛筆による臨書学習では、通常、古典の写真図版を教材に学習活動が行われるが、図版からはその結構をつかむことはできても運筆過程の特徴を把握することは難しい。そこで、運筆時の姿勢・執筆をデジタル化するとともに、速度・筆圧の変化を時間経過を追って把握することによって、運動のリズムとできあがる文字形象との関連を理解する。

・指導者が実際に書いている姿を撮影する。筆の動き、手、肘、肩や身体の重心の移動を抽象化し取り出して映像化。

・運筆時の速度及び筆圧の変化を測定しグラフ化。文字の形象との関連を提示。

 

 

4.2.5保健体育

柔道の投げ技指導における資料のデジタル化

 投げ技指導に関してデジタル処理を施された画像を用いることによって、細部にわたる技のポイントの確認と把握。または、多方面からの同一的視点で技を観察することができ、初心者が短時間で視覚的に技を理解できる。

投げ技の分類により技を精選する。

・手技

・腰技

・足技

それぞれ3・4種選び撮影、コンピュータ処理を施す。

 

4.2.6家庭

1食物領域

 ・調理実習

   たとえば、包丁の種類、切り方、飾り切りの例、

   調理の手順(3分クッキングのようなもの)を映像化したもの

 ・食文化

   昆布ロード、京都のおばんざい料理など、郷土料理などに関する映像

 ・食生活と環境

   エビの乱獲による環境破壊、ヤシ油をとるための森林伐採、環境ホルモンの現状

 ・高齢者と食生活

   同じ材料で高齢者向けと、若者向けの食事の違い

 

2被服領域

 ・被服制作

   被服制作時の要点、採寸の方法、地直しの方法、型紙の置き方

   動作とゆとり

 ・被服材料

   天然繊維の見本映像、合成繊維の見本映像、

 ・被服と環境

   衣服のリサイクルの現状(昔からの知恵、現在の取り組み)

 ・被服整理

   洗濯のしくみ

 

 3住生活領域

 ・高齢者と住居

   高齢者のために工夫された住宅の例

 ・人間とすまい

   気候風土と住居の特徴

 

4家族

 ・家族と社会

   障害者や、高齢者のためのユニバーサルデザインのもの

 

5保育

 ・乳幼児の発達と保育

   月齢と発達の特徴

 ・集団保育

   集団保育での子どもの様子

 

5 おわりに

 かつて,生徒にとっても教員にとっても,コンピュータ室は遠い開かずの間であった。いま,コンピュータはマルチメディア化,ネットワーク化し,普通の人の普通の道具になった。そのコンピュータでどんな教科教育ができるのかを考えるのは,ナンセンスである。教員が本当に伝えたいことをいかにして生徒に伝えるかを考えていけば,そのいくつかは,コンピュータやネットワークが解決してくれるであろう。この便利な道具が,誰もが自由に使える環境にあれば,教科教育の問題点を解決するために,教員の手は自然にコンピュータに伸びるに違いない。

 情報教育のための情報教育ではなく,あらゆる教科科目や学校生活全般でのでのコンピュータネットワークの活用こそが,本当に身につく情報教育となるに違いない。また,そのような活用が新しい教科教育の道を開くに違いない。

 

参考文献

・ 高等学校教育へのインターネット導入の試み(東京学芸大学教育学部附属高等学校研究紀要Vol.34 H.9.3)

・K12マルチメディア高速活用実践報告(東京学芸大学附属学校研究紀要 第24集 H.9.6)

・高等学校教育へのインターネット活用実践報告(東京学芸大学教育学部附属高等学校研究紀要Vol. 35 H.10.3)

・情報化に対応した教育の実践(東京学芸大学教育学部附属高等学校研究紀要Vol. 36 H.11.3)

・平成10,11年度文部省教育課程研究指定校「情報化に対応した教育課程の編成とその実践」研究報告書(H.12.3)