CAIに連結したマルチメディア型LLシステム
1 設置目的
(1) コミュニケーション能力育成の重要性
国際化が進む今日の社会では「聞く,話す」能力がますます必要とされている。高等学校の新指導要領でも、外国語が必修教科となり、オーラル・コミュニケーション氓ェ設置された。基礎的・実践的コミュニケーション能力を育成するために,今後、LLシステムの充実はますます必要不可欠なものとなってきている。
英語指導方法等改善の推進に関する懇談会報告(平成13年1月文部科学省;http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/01/a)では,21世紀に生きる日本人に求められる英語力の中で,次のように英語によるコミュニケーション能力を育てることの重要性を述べている。「21世紀を迎え、我が国及び世界の経済・社会は、一段と国際化、グローバル化が進展していくことが予想される。今後、国民一人一人が、積極的にコミュニケーションを図ることの重要性を踏まえつつ、それぞれの必要に応じて外国語、特に英語によるコミュニケーション能力を身に付けることはますます重要な意味を持つものと考えられる。そのような視点から現状を見ると、日本人の多くは外国語力が十分でないために、国際的な活動や外国人との交わりにおいて制限を受け、また、適切な評価が得られないといった事態も生じている。言わば国際共通語となっている英語によるコミュニケーションの能力の向上が強く求められているゆえんである。」
(2) これまでの英語によるコミュニケーション能力育成教育の問題点
英語によるコミュニケーション能力を伸長させるための教育は,これまでも様々に工夫されてきた。しかし,その成果は十分であったとは言い難い。
英語を聞き取るための工夫として,音声テープ,CDやビデオテープの活用がある。学習者が、音声配信装置とヘッドホン・マイクロフォンを使って
英語の音声学習を個別に行えるシステムとして,LL(Language Laboratory)があり,これらのシステムも,全国に導入されてきた。さらには,外国語指導助手(ALT)を導入した授業も普及しつつある。しかしながら,それでもなおかつ,国際化、グローバル化に対応できる英語によるコミュニケーション能力が十分に育っているとはいえない。
このような原因の1つは,個々の生徒の英語によるコミュニケーションの機会の不足がある。英会話は200時間以上をもって,はじめてスタートラインに立てると言う説もある。たとえば,本校のオーラル・コミュニケーションの授業で,ALTと会話する機会は,週に1時間,しかも1名のALTに対して,20名の生徒がいる。英語の授業以外で,英語を使う機会の無い日本の生徒一人当たりにすれば,英語によるコミュニケーションの機会不足は明らかである。
もう一つの原因として考えられるのは,そもそも,オーラル・コミュニケーションの授業でさえも,コミュニケーションとしての学習環境を十分には満たしていないとも考えられる。言語を単に音声として聞き,音声として発するだけでは,コミュニケーションは成立しない。言語が持つ具体的な意味の理解が必要なのである。その言語理解は,言語と同時にもたらされる様々な情報(視覚,言語以外の音にかかわる聴覚,匂い,触覚,総合的・論理的理解など)とあいまって可能となる。さらには,コミュニケーション自体を必要とするモティベーション,会話の相手次第で刻々と変化する状況への対応の必要性など,英語学習に限らぬコミュニケーション能力育成のための学習状況設定も重要である。
コミュニケーション能力は,コミュニケーションするための内容をもっていること,その内容についての知識をもっていることが大切である。このためには,コミュニケーションを成立させるために必要なマルチメディアな情報を英語ベースで扱うことが重要と言える。
(3) マルチメディア型LLシステムの必要性
以上を総合的・効率的に実現するには,マルチメディアとコンピュータネットワークに対応した英語コミュニケーション学習用CAI(Computer Assisted Instruction)が必要である。
マルチメディアを生かした情報処理教育、いわゆる情報リテラシ教育と発信型語学教育を有機的に結合する教育環境を構築・活用することにより、将来の情報化社会、国際社会を支える人材養成に貢献することができるに違いない。これは,発信型英語教育や対話型語学教育の環境を提供するCALL(Computer Assisted Language Learning: コンピュータ支援型の語学学習)システムにも重なる部分がある。従来の「読む」、「聞く」の受信型教育から「話す」、「書く」の発信型教育を実現したい。このためには,従来のモノローグ中心に行なう学習環境以外に、対話(ダイアローグ)主体に行なう場合、グループレッスンを試みる場合など,状況により必要に応じてフレキシブルに学習環境を変えることができる学習環境が必要である。モノローグ主体の授業は通常の教室で,1人1卓のブース配置となる。対話主体では,2人で1卓を共有する形式が望ましい。グループレッスン主体では数人のグループが1塊となるいわゆる島状のブース配置になる。従来のモノローグ中心の授業は単調になりがちであるが、対話,グループレッスン形式を取入れることによって、対話相手とのコミュニケーションが成立し、言語本来の目的である円滑なコミュニケーションの成立を生徒自身が確認することができる。
2 マルチメディア型LLシステム設置の背景
マルチメディア型LLシステム設置の背景について,情報化,国際化などの観点から国策としての英語によるコミュニケーション能力育成の必要性として,先の「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会報告(文部科学省)」から見てみる。
以下,http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/01/aからの抜粋である。
**************以下,引用*************
1 各学校段階を通じた一貫性のある英語教育
一.各学校段階を通じた一貫性のある英語教育の推進
今後、各学校段階を通じた一貫性のある英語教育のシステムを早急に確立し、各学校段階で身に付けるべき英語によるコミュニケーション能力に応じた指導を推進していく必要がある。そのためには、各学校段階において、今後の国際社会で生きていく上で求められる英語によるコミュニケーション能力として、それぞれの学習段階においてどのような到達目標を設定し、その評価規準及び具体的なシラバスをどのように作成するかについて、学習指導要領を踏まえつつ、全体を通して検討するとともに、接続する学校間で恒常的に検討に取り組む必要がある。
その際には、後述するように、国民全体に求められる英語力(単にオーラル・コミュニケーションだけでなく、インターネットや電子メール等の利用のために必要な読解・作文の能力なども含む。)の育成と、専門分野に必要な英語力や国際的に活躍する人材などに求められる高度な英語力の育成のための方策については、事柄を分けて考える必要があることから、それぞれについて、各学校段階で連携・協力しながら、どのような方策を進めていくか、工夫しなければならない。
さらに、このような一貫性のある英語教育を進めていく際には、外国語学習にとって重要な要素であるモティベーション(動機付け)について考慮することが重要である。そのためには、生徒や学生たちの知的・情緒的発達を十分踏まえ、各学校段階に応じた適切な教材及び指導方法を工夫することが必要である。また、国際社会で日本及び日本人が果たすべき役割について生徒や学生たちに認識させることも求められる。
なお、小学校の「総合的な学習の時間」の中では、現在、英語に触れることや積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲・態度の育成などをねらいとして、英会話学習の取組が始められている。この「総合的な学習の時間」における英会話学習については、各学校の判断で行うことができるが、中学校の英語学習との関連を考慮することも必要である。小学校段階の英語の取扱いについては、この「総合的な学習の時間」における英会話学習の実施状況や、子どもの言語習得の特質などを踏まえつつ、教科としての英語教育の可能性も含め今後も積極的に検討を進める必要があろう。
二. 新学習指導要領における英語の取扱い
現行の学習指導要領においても、外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てることを目標としており、中学校及び高等学校の英語教育については改善が進められ、生徒の聞く・話す力は向上してきているとの報告もなされているが、今後の国際化、グローバル化の進展を見据え、以下のような新学習指導要領の趣旨を推進し、生徒のコミュニケーション能力の一層の向上を図るための更なる改善が課題である。
新しい学習指導要領においては、国際化、グローバル化の進展に対応し、外国語を使って日常的な会話や簡単な情報の交換ができるような基礎的・実践的なコミュニケーション能力を身に付けるため、中学校・高等学校の外国語科を必修とするとともに、基礎的・実践的コミュニケーション能力の育成を一層重視した改訂を行っている。
また、平成15年度から実施される新高等学校学習指導要領においては、高等学校では、外国語科を必ず履修する教科とした。英語を履修する場合は、「オーラル・コミュニケーション氈v(標準単位数:2)又は「英語氈v(標準単位数:3)のうちから1科目を必ず履修することとしている。
指導内容についても、それぞれ中・高等学校において、基礎的・実践的コミュニケーション能力を育成するため、言語の実際の使用場面に配慮した指導の充実を図り、実際に聞いたり話したりするなどのコミュニケーション活動を多く取り入れることとしている。
このような新しい学習指導要領に基づく英語の指導が中学校、高等学校の授業で効果的になされるためには、知識偏重や教師の一方的な授業にならないよう、指導方法の見直しが必要である。また、高校入試や大学入試においては、コミュニケーション能力の適切な評価がなされるよう、出題方式や内容の工夫・改善を更に一層進める必要がある。
2 国民全体に求められる英語力と専門分野に必要な英語力や国際的に活躍する人材などに求められる英語力
今後の国際化、グローバル化の進展を考えるとき、日常的な会話など広く英語によるコミュニケーションが可能な人材の裾(すそ)野を国民的規模で広げることが大切である。同時に、専門分野に必要な英語力や国際的に活躍するために必要な英語力を持つ日本人を多数育成することが重要である。
国民全体に求められる英語力と専門分野に必要な英語力や国際的に活躍する人材などに求められる英語力は、目指すべき目標、内容・程度が異なっており、これらを分けて対応策をとる必要がある。
一.国民全体に求められる英語力
新しい学習指導要領では、外国語を使って日常的な会話や簡単な情報の交換ができるような基礎的・実践的なコミュニケーション能力を身に付けることが、どの生徒にも必要になっているとの考えで、中学校・高等学校の外国語科が必修とされた。
したがって、新しい中学校・高等学校の学習指導要領に示された外国語科の目標を達成するために、それぞれの学校段階でしっかりと生徒にその内容を習熟させることが必要である。また、後述するような様々な指導方法を工夫することにより、習熟を図ることが重要である。
中学校においては、外国語指導助手(ALT)や特別非常勤講師の制度(注1)などを活用して習熟度別指導や少人数による指導を積極的に取り入れるとともに、特に選択教科においては、生徒の興味・関心や習熟の程度に応じ、様々な課題を与えて指導を行う必要がある。
高等学校においても、同様に、「オーラル・コミュニケーション氈vや「英語氈v等の科目の授業の中で習熟度別指導や少人数指導などを積極的に取り入れて、中学校段階の学習内容を含めた基礎的英語力の習熟に努める必要がある。
3 英語教育を行う際に留意すべき事項
一.コミュニケーションの能力を高めること
英語によるコミュニケーション能力の育成を図る際の大きな課題として、我が国では、成人も含め学生や生徒の多くが自分の意見などを発表することに消極的であることが指摘されている。また、英語教育の在り方によってはかえって英語アレルギーを抱く者を生み出しているという意見もある。
このため、英語や英語の背景にある歴史や文化などを学ぶことにより、日本語や日本のことがより分かるようになり視野が広がるということを十分に理解させながら、自分のことを理解してもらうために相手と積極的にコミュニケーションを図ることが重要であるといった意識や、積極的に英語を使って意思疎通を図ろうとする意欲を生み出すような指導が求められる。
二. 過度に細部にこだわらず、積極的に英語を使用する態度を育成すること
外国語として英語を学習した者が、その習得した英語を用いて表現する際は、その者の母語の発音、文法構造等にある程度影響されたものとならざるを得ない。そのため、習得した英語を用いて表現する場合は、完璧(ぺき)主義から脱却すべきであるとの主張も多い。このことは、特に積極的に英語を使用する態度を育成しようとする場合に重要である。
言わば国際共通語となっている英語を用いてコミュニケーションを行うためには、モデルとしては現代の標準的な英語を理解できるようになること、また、発信する英語が相手方に正確に理解してもらえるようになることが必要である。しかしながら、英語を用いたコミュニケーションの指導に当たっては、過度に細部にこだわったり、小さな誤りを指摘したりすることによって、コミュニケーションに対する消極的な態度の形成につながるようなことがあってはならない。
三.コミュニケーションの技術としての英語力を育成すること
コミュニケーションには、自分の考えや情報などの伝える内容が不可欠であるので、そのような内容をしっかり身に付けさせることが大前提であるが、内容があっても伝える技術が不十分では伝わらないこともあることから、コミュニケーションの技術の習得をしっかり行う必要がある。また、コミュニケーションには、聞くこと話すことの力とともに、読むこと書くことの力も重要であり、これらの力を具体的な言語活動を通して有機的に関連付けながら育成することが求められる。
コミュニケーションは、相手を理解し、自分のことを表現して成立する双方向の性質を持つものであることから、理解と表現を統合してとらえ、聞いてそれに反応したり、質問をするなどの力の育成は極めて大切であると言えよう。
**************以上,引用*************
3 システムの概要
このシステムに必要とされる機能を項目別にあげる。
@
各種学習プログラムや教材ファイルを供給するファイルサーバー
A
VOD(video on demand)を可能とするサーバー
B
ODPS(on demand program service)を可能とするサーバー;必須では無いが,今後のネットワーク活用教育を見越して,存在価値がある
C
生徒の学習履歴などの保存,供給サーバー
D
Webへの教材提供サーバー
E
CALL(Computer
Assisted Language Learning: コンピュータ支援型の語学学習)システムおよびCALL用教官端末
F
DVテープ,DVD,CD,MO,MD,カセットテープ,VHS,8mmVTRなどから,教室内ネットワーク上へのマルチメディア情報配信機能
G
マルチチャンネルによるWirelessLANシステム;これにより多様な学習形態(モノローグ,ダイアローグ,グループ型)への柔軟な対応が可能となるとともに,設備工事を最小限に押さえることが可能
H
生徒用ノート型パソコン;マルチメディア,WirelessLAN対応
I
語学演習室LANとのインターネットへのブロードバンド接続;校内的にはブロードバンドLANに接続可能状態
J
全体への教材提示システム;大学院サテライト教室用として一部既設
K
可動式の生徒用机;既設
(1) マルチメディア型LLシステムの機能
以上に関しての説明を以下に示す。
本申請のシステムは、LLにビデオ,デジタルビデオディスク(DVD)などによる映像とパソコンによるCAI(Computer Assisted Instruction)やコンピュータネットワークの活用を有機的に結び つけて、学習効果を相乗的に上げることを狙いとしたマルチメディア型LLシステムである。
従来のLL教室では、学習者が個別に学習できるのは、音声面だけであった。各自のテープレコーダーを使って、録音されたテープ教材を聞いたり、マイクロフォンを通じて自分の発音を録音し、それをモデルの外国人の発音と比較し練習するだけであった。
外国語を学習する場合、映像情報はたいへん重要である。ある表現を学ぶ時、それが用いられる場面を見せながら行うことが、記憶上も、また、実際の使用への応用の面でも効果的である。従来は、LL教室での発語場面提示は、ビデオやレーザーディスクなどによって、学習者全員に一斉に見せる方法のみであった。
したがって、英語の教材(1分~2分の対話場面など)を学習者に見せる場合、見せる回数、また、英語の字幕をつけるかつけないかなどは、一斉提示なので、学習者の理解度に応じて変えることは不可能であった。
しかし、学習者の英語力は、高校ではかなり開きが出てくる。英語圏の帰国子女は、速い会話でも1回の視聴で理解できる。一方、英語の発音に慣れない生徒は、4回位同じ場面を繰り返し視聴してやっと理解できることも多い。さらには、英語の字幕を見ながらでないと、理解できない生徒もいる。本システムは、音声と映像を提供するLL教室に、さらに個々の学習者卓に1台づつのパソコンを設置し、徹底的な個別化を可能としている。すなわち、同じ場面をもう1度見せたり、ヒントを与えたり、字幕をヒントとして提示するなど、パソコンが学習者の理解度に応じて、自動的に判断し、次に最適な学習課題を提示していけるのである。
このように,テキストデータベースに,音声・映像データベースをハイパーリンクさせたマルチメディア型LLシステムには,さらに従来のLLには無く,マルチメディアコンピュータならではの学習環境も提供できる。例えばVia-Voiceなどによる発音認識,評価方式をプログラム上に取り入れれば,発音の自学自習が可能となる。
コンピュータ支援のもとでの双方向性により、ビデオ・オンデマンドや教材オンデマンドなどを活用したマルチメディア対応型の語学教育も可能となる。言語の表現面で必須の手段である音声や文字情報をデジタル化してコンピュータに保存し、デジタル化した映像と共に教官から生徒に送出することはもちろんのこと、語学学習用データを高速かつランダムにアクセスしたり、教官と生徒の間の通信や生徒間の通信を可能にし、音声だけでなく、コンピュータの画面のモニタリングや誘導も容易である。また、インターネットや電子メール等の利用も同じ環境で実現できる。
以上は,多くの場合モノローグ型の学習が中心の場合であるが,ダイアローグ型,グループ型での学習とする場合には,コンピュータネットワークシステムを生かしたまま,グループの島状配置が必要となる。コンピュータからは,グループごとに選ばれた学習プログラムが与えられ,これを話題としてグループでの意見の交換,主張が展開される。その内容は必要に応じ,CALLシステム用コンピュータで捕捉され,教官卓などでモニタリングも可能とする。あるいは,あるグループのコミュニケーション展開状況を,語学演習室全体に配信することも可能とする。特に重要なことは,はじめは規定されたプログラムから始まるものの,グループ型学習により,本来のコミュニケーションが実現され,コミュニケーションの動機付け自体もそこで形成され,しかも生身の人間を相手とすることにより柔軟な対応が迫られるのである。
これを実現するには,コンピュータネットワークは高速回線で結ばれているだけではなく,無線でのネットワークが実現されている必要がある。また,それを支える,LLシステム管理サーバー,ファイルサーバー,ルーター,無線LANなどの一連のネットワークシステムを必要とする。
(2) マルチメディア配信のための技術
これらは現状のインターネットシステムに,マルチチャンネンル無線LANを構築することで実現される。特にサーバー,ネットワークや端末に負荷を与える動画ファイルやアプリケーションソフトの配信については,次のような具体例が存在し,十分に実用化の段階にある。
教科教育をよりよく実現するためには,たとえコンピュータネットワークが使えても,使うための教室移動や機器の搬入,使用方法の習熟など多くの努力を必要とするのでは,現実的な活用はありえない。テレビ,ビデオや電話くらい簡単に使えるものでなければいけない。しかも,毎日,毎時間活用することを考えれば,必要なファイルは必要なときだけ端末上にあるのがよい。
このような条件を満たすようなシステム開発はまだされてはいないようだが,校内ネットワークであればローコストでのVOD(ビデオ オン デマンド)システムやODPS(オン デマンド プログラム サービス)システムは実用化されており,今後の発展は期待できる。その一例をSoft On Net社の製品から見てみる。
@ ezs VOD
VOD サーバー
Windows2000,NT
Pentium500MHz以上
RAM512MB~
MPEGキャプチャーボード
VOD クライアント
Windows95,98,2000,NT
Pentium133MHz以上
RAM32MB~
これで,最大8時間連続再生(もちろんそれなりのHD容量は必要である),MPEGデータの高速Streamingが可能で,1サーバーに60台までのクライアントが接続できる。もちろん,VODと同時にインターネット接続も可能である。普通の授業場面では,これほどのVOD能力は要らないが,語学学習や自学自習などには有効かもしれない。
A MS Ziggit
これはODPSの例である。サーバーもクライアントも(1)に示す水準でよい。主な働きは,クライアント側のWebBrowserからの要求で,OnDemandでアプリケーションプログラム(ワープロ,表計算,マルチメディアソフトなど何でも可能)を配信し,終了時には再利用できない状態とする。プログラムをクライアントにインストールするのではないが,アプリケーションプログラムそのものは,クライアント上で動作するので,サーバーとの交信がなく,サーバーやネットワークへの負荷が少ない。クライアント数が増えるとそのシステムセットアップやバージョンアップだけでも大変な作業となるが, ODPSによりその必要性は無くなる。
このような学習情報を生徒が家庭などで復習にも使えることが望ましい。これまで,視聴覚教材を活用しても,その多くは授業中に見聞きするだけで,復習の際に再度生徒自身がその教材を利用することは困難であった。しかし,Webブラウザを活用するものとすれば,比較的プラットホームフリーの教材提供が,校外に対しても可能となるであろう。もちろん,十分なセキュリティーシステムが必要であることは言うまでも無い。
いずれにしても,CAAL(Computer Assisted Language Learning)システムの活用実践研究は多くの大学で実施されており,一部の高校でもこれを検討する動きがある。また,既製品としてのシステムもいくつか存在する。以下にその例をあげる。
小樽商科大学言語センター
摂南大学国際言語文化学部 語学教育と情報化
京都大学 総合情報メディアセンター
大阪府立千里高等学校
パナソニックのLLシステム、WE-LL500Aシリーズ
LL機器 (SONY LLC-2000M)
本校で提案するシステムは,これまでのような既成のシステムではなく,インターネット回線を利用したCAIと連結した汎用マルチメディア型LLシステムである。ローカルなコミュニケーション学習のほかに,電子メールやWebを利用した文字ベースの生の語学学習,CU-SeeMeなどを利用した音声・映像レベルでの活きた語学学習ももちろん可能である。
また,コミュニケーション学習だけでなく,一般的なインターネット端末としても利用可能であり,この端末と大学院サテライトのテレビ会議システムを併用することで,さらに新しい活用も可能となる。例えば,テレビ会議システムで小金井キャンパスからの講義や質疑を展開し,必要な学習教材の入手や,インターネット上での個別の応答なども可能である。語学演習室にインターネット回線接続のマルチメディア環境を構築すれば,テレビ会議システムとも連動させることで,大学や他の附属学校との教育研究の連携を深めることもできるであろう。
また,マルチメディア型LL学習を,Web上で利用できるようにしておけば,語学演習室以外の端末からでも,コミュニケーション学習が可能となり,校内のあらゆる場所で復習や宿題ができる。つまり,校内全体がマルチメディアLL型システムを利用できる可能性も大きい。
以上のシステムを,次に図解する。
語学演習室
4 導入により期待される効果
以上のように,本校が提案するマルチメディア型LLシステムには,多くの特徴と大きな学習効果が期待できる。最後に,この点について簡単にまとめておく。
@
マルチメディア型LLにより,言語情報と実体情報とが有機的に結びついた形での学習ができる。
A
ネットワーク構造により,プログラムの配信,学習履歴の収集などが容易である。
B
無線LANとノート型パソコンの利用により,語学演習室を多目的に利用できる。
C
無線LANとノート型パソコンの利用により,学習形態として,モノローグ型,ダイアローグ型,グループ型などの柔軟なスタイルが選べる。
D
マルチメディア対応コンピュータの活用により,様々なメディアが利用でき,発音の解析・評価も可能である。
E
Webを活用することで,語学学習室に限らずにLL学習の復習ができる。条件次第では,家庭での復習にさえ利用の可能性がある。
F
テレビ会議システムとの連携により,大学院サテライトをはじめ,大学やほかの附属学校との連携活用の幅が広がり,小中高一貫教育にも活用できる。