特別支援教育

本校の特別支援教育は、平成19年度・平成20年度の2年間文部科学省の「高等学校における発達障害支援モデル事業」の指定を受けてスタートした。2年間の実践研究を契機に、支援を必要としている生徒について、組織的に考える支援委員会が発足し、支援委員会では、主に「教職員や保護者に向けての啓発活動」「早期支援のための早期把握」「個別支援チームの編成」「個別の情報交換による支援の方向性の検討」を行ってきた。2年間のモデル事業終了後も、東京学芸大学から「特別開発プロジェクト」の指定を受け、研究を継続している。

モデル事業で行った講演会、研修会

講演会

  1. 〔07. 7. 7〕【なぜ今高等学校で特別支援が必要なのか】
    東京学芸大学教授・日本LD学会会長 上野 一彦先生
  2. 〔 07.10.20〕【子供の脳が危ない】
    上智大学名誉教授・犯罪心理学者 福島 章先生
  3. 〔08. 3.10〕【高校生の今と昔】
    帝塚山学院大学教授・精神科医 香山 リカ先生
  4. 〔08. 7. 8〕【中学校から高校への支援のあり方】
    東京学芸大学准教授・附属竹早地区SC 松尾 直博先生
  5. 〔08. 7.18〕【(生徒)個性を理解しよう−「LD教授」が語る素晴らしき「発達障がい」−】
    東京学芸大学教授,日本LD学会会長 上野 一彦先生
  6. 〔08.10.18〕【がんばらない・あきらめない】
    文部科学省初等中等教育局特別支援教育 調査官 樋口 一宗先生
  7. 〔09. 3. 9〕【e-ラーニングでの発達障害支援】
    京都大学霊長類研究所認知学習分野教授 正高 信男先生 
講演会の様子

研修会

  1. 〔07. 5. 22〕「特別支援研究の経緯」「入門ガイダンス」
    特別支援委員会
  2. 〔07.07.05〕サイコセラピストが行う行為
    江夏心の健康相談室代表で臨床心理士 江夏亮先生
  3. 〔07.12.12〕グループワーク:「生徒の把握」の実践例(面談の手法と活用)  
    特別支援委員会
  4. 〔08.05.22〕「傾聴法」について
    江夏心の健康相談室代表で臨床心理士 江夏亮先生
  5. 〔08.07.10〕「傾聴法」について(2)
    江夏心の健康相談室代表で臨床心理士 江夏亮先生
  6. 〔08.12.10〕「アサーション」について
    カウンセリングルームプリメーラの心理カウンセラー 袰岩奈々先生
  7. 〔09.03.09〕「トータルコミュニケーションサポート」
    富山大学学生支援センタートータルコミュニケーション支援室 吉永崇史先生,西村優紀美先生 
研修会の様子

特別開発プロジェクトでの課題

  1. 教職員
    • 保護者に対する啓発活動の継続
    • 本校の支援方針の定着を目指したPR活動
    • 校内研修会や講演会などの実施
    • 外部の研修会への参加
    • 委員会の枠を越えた取り組み
  2. 生徒・保護者・担任の支援体制の確立
    • 保護者を含めた個別的な支援体制の確立
    • 大学や外部機関などとの連携の強化
    • チームで支援する体制を定着させる意識改革
  3. 支援ニーズの把握と具体的な支援
    • 登校支援(欠席調査による不登校傾向の把握)
    • 学習支援(教科指導上のつまずきの把握)
    • 生活支援(面談を活用した生活上の困難の把握)
    • 支援可能な内容の提示(安心できる体制作り)
  4. 具体的な支援の蓄積(ソーシャルバンク)
    • 個別支援について評価・検討
    • 過去の支援事例などの調査・分析
    • 生徒の意識調査や教員の意識調査
    • 保護者からの要請に対応できる体制の整備

早期支援のための取り組み

 高等学校で,担任が最も頭を悩ますのは「生徒が不規則な登校状態になった時」である。いわゆる不登校の状態になる前に,早く気づき,保護者と連携を取りながら,本人の自己肯定感を下げさせない対策が重要になる。早期支援につながる対策として,「月3日以上の欠席者の調査」「授業時数の3分の1の欠課者の調査」を,また,大学生や教員と放課後に自由に語れる場としての「お茶会」を試行した。

個別支援チームの考え方

 担任一人で抱えるには困難が大きい場合や多面的な視点が必要な時などに,支援チームを編成し,個別支援計画を作成している。支援チームは,担任や学年,教科指導などで関わりの深い教員,コーディネーターおよび保護者などで構成する。それぞれの視点から今の状況を確認し,長期的な目標を設定する。そして,それが達成できるよう短期的な課題を設定,実行,確認するのが主な流れである。対象生徒の困難の種類によっては,医療機関と連携したり,大学の心理学講座の先生からアドバイスを頂いたりする。
 個別の授業や評価においても,チームによる個別支援の対応は大切である。「どう生きて行くか」,あるは「どのような進路形成をするか」という課題を自分でクリアできるまで一緒に寄り添うという長い視点での対応は,多くの観点が集まるチームでの意見交換が有効である。

学習支援に関する考え方

 授業力の向上に関する取り組みは,教員には比較的取り組みやすい課題である。授業の流れをあらかじめ提示したり,板書の仕方を工夫したり,机間巡視しながら生徒の様子や理解度を確認することなどは基本であるが,最近では,プロジェクターを使って,映像を取り入れながらの授業も多く見られるようになった。ICT の活用として,生徒応答システムの試行もなされている。
 また,本校には,毎年300 名近くの教育実習生が大学からやって来る。東京学芸大学では教職志望の全学生に対して,特別支援教育の授業を受講することが義務づけられており,教育実習の場でも,本校の取り組みを紹介している。教員の話を聞き取りにくい(音声情報が取得しづらい)生徒のために,課題などの指示を板書に残す(文字情報も同時に与える)といった取り組みは,困難を持つ生徒だけでなく,すべての生徒に役立つ対応であることなどを説明している。教育実習の時から,生徒の認知の仕方の特性や,音声や光,触覚などに対 する感覚特性のある生徒がいることを知っていることは,教員の資質として欠かせないことである。

高校での特別支援教育の方向性

 多様な問題の解決には,「ソリューション・バンク(解決銀行)」という考え方が一翼を担う。成功例を丹念に分析,考察し,多くの人と得られた知見を共有すること,より良い支援を提供するための力を結集することが課題となる。また,支援の成果に関する考え方には,各人の価値観や人生観が反映される。再登校,出席日数の増加,進学などの実現件数などの数値目標の達成を成果と考えるか,生活の質の向上,すなわち充実感や満足感を持って日常生活を送ることを成果と考えるかにより,当事者の負担が増減する。何を目標にするかを全教員で共有することが力の結集に大切である。

  1. 履修・修得をどのように弾力的にとらえる
     様々な理由で,登校できない,登校しても保健室にいて教室に行けないなどの困難を抱えた生徒に対しては,一日も早く教室にいけるような支援をするのか,休養を最優先させる支援をするのかの判断が難しい。高等学校の場合,保健室への登校は,授業は欠席として扱われるので,履修・修得の助けにはならない。課題を挙げておく。
    • 特別支援室の設置
    • 特別支援室の運営
    • カリキュラムの工夫
    • 評価の弾力化
  2. 評価に関する配慮
     評価における配慮としてAccommodationやAdaptationという視点を検討した。Accommodationは,評価方法の支援という視点で,基本的には到達目標は同じだが,課題の内容・方法に対する配慮,期限の延長などの配慮が考えられる。一方,Adaptationは,評価そのものの支援であり,状況によっては到達目標を柔軟に考える所まで検討する。これらをうまく組み合わせ,ニーズにあった支援体制づくりを検討している。
  3. 特別支援が目指すもの
     本校の取り組みは,「発達障害」に限定せず,「ニーズのある生徒に対応できるような体制づくり」を柱に対応してきた。その結果,むしろ「鬱」などの精神的なサポートが必要なケースが多く見られる。特に,本校の場合,両親からの期待が大きく,その期待に応えるべくまじめに取り組んできた生徒の中に,自分の感情を外に出せずに苦しんでいる例に重大なケースが多いようだ。なかなか難しことではあるが,少しでも「感情の言葉を聞いてあげる機会」を作れるように意識して行くことが大切だと強く感じている。

いじめ対策基本方針

  本校におけるいじめ防止等基本方針

研究報告書PDF